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立 山 歴 史 紀 行 2



朝日に輝く1万尺稜線(大汝山から雄山神社本宮を望む)




立山三山縦走;一日目
立山登山の拠点である室堂へは、富山駅から地鉄の直行バスを利用した。
バスは予約制で、シーズン最盛期の旧盆前後は6:30から8:30まで3便あるので、便利である。その上安い。 我々の本日の行程は余裕があるので、富山市内の滞在先でゆっくり朝食を取り、8:30の便で室堂へ向かった。
バスは富山空港へ立ち寄る。ここで満席となった。
空港から乗り込んだ客の一人が、車のライト消し忘れに気がつき、あわててバスを止めて降りていく。
「お客様、キノドクナ~、駐車場は近くにあるガデ~、すぐに発車するガ、少しお待ちください」
あわてて降りた客に代わり、人の良いドライバーがマイクを通してシラケた顔の乗客に謝った。
ここで15分ロスした。
バスは予定より遅れ、11:15に室堂バスターミナルに到着した。雲が多いものの室堂周辺の視界は悪くない。
私は室堂へは6度目、立山登山は2度目である。此処は年々観光客が増えている。たくさんの旅行社が日本を代表する山岳観光コースである【立山黒部アルペンルート】のツァーを売り込んでいるのだ。今日もターミナルビル周辺はツァー客でごったがえしていた。
今回は珍しいことに、息子が同行している。彼にとっては、山小屋泊・北アルプスともに初めてである。
玉殿の冷たい湧水をポリ容器に満たし、11:30に出発した。


一般的に立山というと、雄山神社本宮が鎮座する雄山を指す場合と、雄山・大汝山・富士の折立を含む3000m山稜の塊を指す場合がある。
また、この三高峰を立山三山と呼ぶ人が多いようだ。が、特に決まっているわけではない。
立山三山を信仰の観点から言へば、浄土山・雄山・別山の三山を指すのが妥当である。それぞれの山が宗教的意味を持つからである。
一般的には、後者の三山を含む広い山稜を【立山連峰】と呼んでいる。
今回のコースは、本編を「立山歴史紀行」と名付けた手前、浄土山・雄山・別山と縦走し、地獄谷巡りを行い、さらに日本最高所のみくりが池温泉入浴で締めくくる、立山三山完全制覇を目論んでいる。
また往時を偲ぶ思いで、雄山で御来光を拝むことを計画の目玉とし、その都合から一の越山荘に泊まることにした。


バスターミナルから一の越へ向かう一般ルートを辿ると僅か90分で山荘に着く。13:00山荘到着では早すぎる。浄土山経由の遠回りで時間的にちょうど良い。浄土山へは一の越ルートから右へ分岐する
こちらのコースに入ると急に静かになった。室堂山の展望台まで歩きやすい遊歩道が続く。登るに連れて随所に小雪渓が現れた。
小一時間で展望台に着いた。断続的にガスが覆う。ガスが覆うと急に寒くなるので、レインウエアを羽織った。此処で昼食休憩、お弁当は富山名物「ますの寿司」
残念なことに、五色が原方面の視界を全く得る事が出来なかった。
30分ほど休憩し、少し戻って雪渓を渡り浄土山への登りに取り付く。実際の標高差以上に山頂が高く遠くに見上げられた。
北アルプスらしいガレた岩場の急登で、慣れない息子がつい弱音を吐く。だが、30分ほどであっけなく山頂の一角に出てしまった。
山頂は広い。どういう訳か日露戦争戦没者の慰霊碑が建立されていた。相変わらず五色ケ原方面の視界が全くない。立山・室堂平側は間欠的にガスが切れ待望の景色が広がる。 だが、後立山連峰方面も視界が悪い。30分ほど諦めきれずに滞在し雲が切れるのを期待したが、とうとう先へ進むことにした。
広い山頂一帯は一面のお花畑で、可憐で小さな高山植物が何種類も咲き誇っていた。が、私はコバイケイソウの他は知らない。
すれ違った数人の登山者グループが雷鳥を見たと云う。しかもヒナばかり何羽もいて親鳥がいなかった、と云う。雷鳥を知らない登山者もいるようだ。私は雷鳥は間近で見た事があるので、間違えることはない。
富山大学の山岳研究用建物手前から左に分岐し、一気に一の越へ下ってしまった。山荘へは15:00少し前に着いた。


一の越山荘はロッジ風の大きな山小屋で、我々二人に六畳の個室が与えられた。個室が主体のようだ。山小屋では、相部屋で知らない客同士が山の話で盛り上がるのが楽しいのだが。
幾分空き部屋があるようだったが、食事は二班に分かれ、我々は17:00からの初回であった。食事時間は30分。 ゆっくりとくつろぐわけにはいかないが、ビールを各々1本飲んだ。シチューにコロッケなど、なかなか美味しい。
部屋でくつろぎ、持ち込んだ酒500ccをチビリチビリやる。いつものことながら不足してしまい、仕方なくビールを自販機で購入した。

天候は急速に回復してきたようで視界が広がり、遠く海岸付近の街の薄明かりの上空に、打ち上げ花火が上がるのが窓越しに見えた。魚津の町だろうか、大きな花火大会のようだが標高2700mの山荘からは線香花火のように見える。
星が鮮やかにまたたいて、明日の好天に期待がかかる。


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