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熊野三山&熊野古道3


熊野本宮大社


熊野本宮大社
軽食を取って峠を出発。下り一方の道となる。比較的緩やかな道だが、時折岩石の急坂があり油断できない。三十丁石付近からは雄大な熊野川の流れと本宮集落の見晴らしが素晴らしい場所があった。
本日初めて登山者と出会った。単独の青年で大荷物を背負っていた。
「峠まであとどのぐらいですか?」と聞いてきた。
「1時間ぐらい、もうひと踏ん張りです」
「ああよかった、ほっとします」
1時間は自分が下ってきた時間である。重い荷を背負っての上り道は健脚者でも1時間半はかかるだろうなぁ。ごめんね、がんばってね!!
下がるに連れて暑さが増す。民家の脇を抜け石段を下りて八木尾のバス停である。峠から2時間半ほどかかった。
灼熱の国道を歩いて本宮に向かう気にはならない。40分ほど待ち、新宮行きバスに乗る。ここまで既に4時間も走ってきた長距離路線バスだが、鉄道並正確さで予定時刻通りに八木尾のバス停を発車した。

本宮大社は以前は熊野川の中州にあったのだが、明治22年熊野川の氾濫で流され、明治24年以降に現在地の高台に再建されたものである。 旧社地は「大斎原」(おおゆのはら)と呼ばれ、日本一高い大鳥居(高さ33.9m、横42m、鉄筋コンクリート造、平成12年完成)が建っている。
中州にあった旧大社の境内を古い絵図で眺めると、熊野三山の中でも別格な規模を擁していたことが分かる。 熊野古道各ルートが熊野本宮大社を目指していたことからしても本宮大社は格上の存在だったことは間違いない。
正面石段を登り立派な神門をくぐり格式高い本社殿に参拝するはずだった。 ところが上四社は当時修復工事中でネットシートに覆われてしまっていた。私は門をくぐるまで工事中のことを全く知らず、大変落胆したのだった。
なお、小辺路を誠実にたどると、三軒茶屋跡で中辺路と合流し、本宮大社境内裏鳥居に至る。

本宮大社神門



熊野那智大社&青岸渡寺
翌朝新宮発6:58田辺行き電車に乗る。JR西日本運行の紀勢本線で電化されている。十数分で那智駅着。
那智駅は那智大社や那智の滝観光の表玄関としての施設規模を想像していたのだが。駅舎こそ社殿を模した造りだが、特急が停まってくれないガランとした無人駅だった。ところが面白いことに構内の隣接地に道の駅が。 おまけに日帰り入浴施設までも。鉄道駅と道の駅が同一敷地内に隣接する場所は大変珍しい。私の知る限り此処だけではないだろうか?
早朝のバスは土産物やの従業員らしき地元民数名、観光客1名を乗せて出発、終点那智山まで行く。
那智山は熊野三山の中で一番華やかな霊場である。名瀑那智の滝の存在が大きい。古来、滝を神にみたてた信仰が熊野那智大社に至ったものだろう。現在は「飛瀧神社」として那智大社の別宮となっている。
このほかにも、「那智山青岸渡寺」がある。西国三十三所第一番札所で明治期の廃仏毀釈を免れ、如意輪観世音菩薩を本尊とした天台宗の寺。そして熊野古道の「大門坂」と見どころに恵まれている。 後背地には勝浦温泉があり、南紀屈指の観光地。したがって周辺には土産物屋が多い。

熊野那智大社


終点でバスを降りた数名、それぞれのお店の開店準備へと向かった。
私はというと、観光客に似合わない40Lの登山ザックを背負ってその辺をキョロキョロ。 ザックは駅のコインロッカーに預けるつもりが見当たらなかった。まだ八時前である、観光パンフレットを入手したかったのだがどこも閉まっていた。 仕方なく大きな立て看板の案内図で廻り順を確認する。
まずは「大門坂」へ。那智山麓からバスターミナルまでおよそ600m、石畳と杉並木が保存された那智大社の表参道で熊野古道の代表的観光地。多くの観光客は麓の駐車場から大門坂を歩いて登り、帰路はバスを利用し駐車場へ戻る。 昨日熊野古道を6時間以上歩いた私は、大門坂の由来である大門跡地から十数歩下ったところでお終いにした。
次に熊野那智大社へ向かう。両側に土産物屋が並ぶ長い石段を登る。立派な鳥居をくぐると姿を見せる鮮やかな朱塗りの社殿数棟が繋がり、伽藍造りの様相。自分以外の参拝客は誰もいない境内は厳かそのものだった。 本宮・新宮両大社を凌ぐスケールの大きさ。白装束で掃き清め作業中の神職の方や開店準備中の売店の巫女さんなどから丁重な挨拶を受けた。

青岸渡寺本堂

青岸渡寺は那智大社に隣接し、境内より直接行くことができた。
未だ参詣者のいない境内では僧侶が一人作務衣姿で水を巻いていた。こちらでも丁重な挨拶を受ける。
格式高い本堂は天正年間(秀吉の時代)の建立で、南紀最古の建造物とされている。
境内には本堂や鐘楼などきわめて古い建物と三重塔や納骨堂など新しい建物が混在し、各所から展望する那智の滝が益々重厚なる古刹を演出する。 まさに熊野那智大社と熊野青岸渡寺は神仏習合の賜物で一体となり、那智は神聖なる熊野の中でも際立つ一大聖地なのだった。
青岸渡寺境内から鎌倉式石段の道を下り那智の滝飛瀧神社鳥居へ。手入れが行き届いた大門坂に比べはるかに当時を偲ばせる石段の道であった。
那智の滝は滝そのものが滝飛瀧神社のご神体。滝見台の鳥居中央にこのご神体が収まる景色である。だが当日は、河川改修工事の真っ盛り、ご神体に重なるように据えられたレッカー車がブームを目いっぱい伸ばし滝と高さを競う無粋な景色。
チラホラ現れ出した観光客の思い同様いささか興ざめである。帰りは那智の滝入口からバスに乗る。
仕方なくここまで背負い続けた40L登山ザック、那智駅に戻るとどいう訳か簡単にコインロッカーが見つかった。

2013.08.17 掲載

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