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八ヶ岳編笠山 2524m 2007.10.13


南アルプス大パノラマ;左から鳳凰山、北岳、甲斐駒ケ岳、雲の裏に仙丈ケ岳、右端は鋸尾根

編笠山は八ヶ岳の最南端に位置し、その名の通り整った円錐形で遠方からも特定しやすい山である。北ヤツ側から縦走すると、最後に登る山となり、八ヶ岳主峰群の最高の展望を眺めながら別れを惜しむ山となる。 編笠山単独を目標にしても観音平駐車地から高低差1000mあって、なかなか登りがいのある山である。 健脚者には権現岳と合わせて首都圏から日帰りも可能のようだ。本編で紹介しているコースの他に富士見高原からのルートがあり、こちらは幾分きつそうである。

コース&タイム;
観音平駐車場8:15〜9:05雲海台9:15〜10:00押手川10:10〜(休憩10分)〜12:00山頂(昼食休憩)
山頂12:40〜13:00青年小屋13:10〜押手川14:15〜14:55雲海台15:05〜15:45駐車地=鹿の湯八峯苑ホテル泊
所用時間;7時間半、歩行時間;6時間



盛りを過ぎた黄昏時の男どもがメンバーの我が【山温会】、2007年秋の例会はKennzouさんの引率により八ヶ岳山域の編笠山登山&温泉と宴会は麓富士見高原リゾートの【鹿の湯八峯苑ホテル】で挙行された。
今回の参加者は4人、いつも代り映えしないメンバーであるが、登山パーティには適した人数である。
本会には山行最中のメンバーに事故・体調不良などの理由で脱落者が出た場合は置き去りにすると云う基本的な戒律がある。10年の長きにわたり20数回に及んだ例会に於いて、幸い戒律を厳密に適用された者は未だにいないのである。 だが、不整脈による心不全や、疲労凍死目前やら、腰痛膝痛合併症による歩行障害やら、厳しい掟が適用寸前の事態に陥った者は何度か出現した。また、登山途中の休憩時に全員が飲酒し、挙句の果てに全員で山頂をボイコットしたこともあった〜前代未聞の全員泥酔による山中全員置き去り事件である。 かように戒律は厳しくとも運用面はまことにいいかげんなのだ。
いいかげんなパーティは、それに相応しく各人の装備もまたいいかげんである。前回の尾瀬沼ではKJさんの靴底が剥がれてしまった。作者がたまたま靴ヒモを用意していたので、その際は応急措置で事なきを得た。 ところが今回も靴底を剥がした者がいた。前回の教訓を生かし、事前の点検確認をしっかり行うという精神を我が会員は誰も持ち合わせていないようだ。ありがたいことに今回は前回の失敗経験者であるKJさんが丈夫な靴ヒモを用意してくれていたのでまたまた事なきを得た。 彼の奥方様が持たしてくれたのである。いいかげんなメンバーのパーティだ、今回も誰かヘマするに違いない、前回夫の恩返しにと用意したのだ。実際そのヨミは見事に的中し、大いに救われた者がいたのだった。

   
          靴底の正しい補強法


八王子インターから中央道へ入ったのがおよそ6時40分、レガシー4WD3gはハイオクガソリンを大量に呑み込んで排気ガスを撒き散らしながら疾駆する。双葉S.Aで休憩してさえも小淵沢インターには8時に着いてしまった。そこから登山口の観音平駐車場まで15分足らずである。
予定より早く到着したおかげで、駐車場所はまだ余裕があった。詰めれば40台前後の駐車スペースがある。だがマナーの悪い止め方も目につく。
我々は計画タイムより45分早い登山開始となった。この差は大きい。時間の余裕は気持ちのゆとりとなる。特に脚力の劣る者二人にとってはありがたかった。
登山道はゆるやかに雑木林を行く。展望はないが森林浴的感覚が悪くない。健脚組の二人は徐々に私とKJさんを引き離しにかかる。
「Sigeさん、こちらは後ろをゆっくり行くからね」
「靴底が剥がれおちていたら、拾っといてあげるからね、安心して裸足で先行してね」
押手川までおよそ2時間、幸せな道が続いた。

押手川は分岐点となっていて、直進が目指す山頂へ、右折すると山頂を巻いて青年小屋へ至る。またその先、権現岳への登頂路となる。我々はこちら側を下山路とする計画だ。
押手川周辺はコケが密生していて、手で押すと川のように水が迸ったことからこの地名が付けられたとある。
この先山頂まで高低差およそ400m、傾斜が急に増し、岩場が増える。苦しい登りに、とうとう八ヶ岳の一角に踏み込んだことを感じた。
植生は雑木林からコメツガ林へと変化しやがてハイマツが混ざりだす。先行組の二人は時折休憩しながら遅れた二人を待つ。後ろの二人が追い付くと直ぐに出発するので、亀足組は休憩する時間を取れないのだった。
潅木が途切れると、後方に南アルプスの素晴らしいシルエットが浮かんでいた。雲が多い天気との予報は見事に外れて秋晴れが広がっている。此処でようやく我々亀足組も休憩にありつくことができた。
従来kennzouさんはシンガリ役を引き受けるケースが多いのだが、今回はリーダーで先導役のために本来の健脚ぶりを如何なく発揮しているのだった。

山頂は岩石帯で広い。それまで見えなかった八ヶ岳の峰々が、山頂の一角へ攀じ上がると当突然ドーンと姿を現した。ドーン!という音が間違いなく聞こえた。
「どうだ、まいったか、これだよこれ!」先に着いていたSigeさんが、自分の所有物の如く自慢げに云った。
遠方から眺める八ヶ岳は一塊の大きな山に見えるが、ここからは盟主赤岳はもちろんのこと、阿弥陀岳、西岳、ギボシ・権現岳などが独立峰の如くニョキニョキと聳え、その眺めは圧巻である。
「午後からあそこを目指して縦走するぞ!」リーダーが赤岳を指差した。
「お一人でどうぞ」KJさんがすかさず答えた。
目を西に転ずると、そちらもすごい。槍穂高はクッキリ確認することができ、さらにその奥に常念から白馬まで後立山連峰が連なっていた。その他、乗鞍・御嶽山・木曽駒ケ岳等々、本州脊梁山地の名だたる高峰ほとんどが視野にある。
「日本は狭い、太平洋側の富士山から日本海側の山まで一望だ」Sigeさんが唸った。
山頂での記念撮影を済ませ、一通り山座同定も終わり食事の支度にかかる時、
「青年小屋で昼食休憩にしよう、此処は寒い」Sigeさんがとんでもないことを云い出し、たちまちリーダーも同調する素振りを見せた。
ビールが欲しいのである。長年の付き合いで二人の魂胆が私にはお見通しなのだ。KJさんと共に断固反対したことは云うまでもない。

山頂にて

食事が終わる頃、諏訪側から黒い雲が急速に山腹を駆け上げてきた。早々に下山を開始する。火山礫がゴロゴロした場所を降りる。下り着いた鞍部の青年小屋から見上げた山頂はすでに雲の中だった。今頃山頂に着いた登山者は白闇の世界に違いない。 そうなると編笠山の値打ちは限りなく下がる。我々は45分出発が早まり、その差を保ったまま山頂へ到着したことは幸せだった。
青年小屋は老化が進んだ終末期のような小屋である。入口に赤ちょうちんがぶら下がり、遠い居酒屋とある。その風情といい、そのふざけたネーミングといい、楽しそうな小屋ではあった。権現岳への登山基地として利用されることが多いのだろう。 裏手には広いテント場があり、水場も近いようだ。
酒類は宿までこらえることで一致した我々は下山を開始した。それまでの山のモードは一気に酒と温泉モードに切り替わった。みな思いは一にして、黙々と樹林の道を下って行くのだった。





鹿の湯八峯苑ホテル

  
       八峯苑ホテル

小淵沢I.Cから15分の富士見高原にあるリゾート宿泊施設である。現在本館を建て替え中で、平成20年6月にオープンを予定している。現在利用で来るのは洋館のみで全室ベッドルームである。部屋はすべて目の前の池越しに南アルプスを望める。
温泉は広い浴室と露天風呂があって、日帰り客にも人気が高いようで、宿泊客以外の客で結構混み合っていた。
食事は可も不可もなくといった塩梅である。

   長野県諏訪郡富士見町境広原12067  TEL 0266-66-2131 FAX 0266-66-2566

※ 酒類消費明細;500ccカンビール6本、ビンビール2本、地酒冷酒【真澄】4合、アツカン銚子3本、ワンカップ大3本、
焼酎1本半、サントリーモルツウイスキー1/3ボトル 以上4人で
  2007/10/26 掲載

no.10 榛名山へ 、no.9 編笠山 no.8 鬼ヶ岳へ