おじさんたちの青春登山  御坂鬼ケ岳1738m &下部温泉 2004/05/01


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鬼が岳山頂を望む                     大黒屋にて


コース;西湖根場=林道奥駐車地~東入川登山口~雪頭ケ岳~鬼ケ岳~往路下山=下部温泉大黒屋泊
所要時間;6時間



2004年5月1日おじさん5人で富士五湖外輪山の御坂山鬼が岳へ向かった。
キャッチフレーズは「御坂山塊鬼ケ岳1,738m汗たっぷり7時間登山と信玄の隠し湯、下部温泉」である。
5人は元某建設会社の同僚、今はやりのリストラで全員退職し第二の人生を辛苦?している55歳から60歳の間のおじさんである。共通事項は全員飲助で、目的は、いい汗かいて温泉へ入り旨い酒を飲むということである。そのためには山で体力を消耗しすぎはいけない。でも、時々幹事さんがはりきりすぎて体力を消耗する山へ連れて行こうとする。
今回もそのケースである。案内がいい「登山コースは中級です。日頃から訓練されている皆様にとっては問題ありません」ときた。皆、団塊の世代であり切磋琢磨の競争を生き抜いてきた?負けごとはいえない。でも、案内の地図を見ると標高差が900mもある。内心、俺大丈夫かな?と不安に思った。とまあ、そんな心理状態で1台の車で西湖根場湖畔の登山口へ向かった。
8時30分登山口着。ゴールデンウイーク前半戦であり道路が混むかと思ったがそれほどでもなかった。天気は上上。でも登山客はあまり見かけない。西湖湖畔は結構にぎわっているのだが。さて、下から頂上を見るとほんと雲を衝くようだ。なんせ900mあるからね。本当は700mくらいがいいのだけど、と思うが口にはだせない。
さあ出発!幹事のEさんを先頭に一列縦隊でゆっくりのぼる。出来たての砂防ダムの脇をとおり、樹林の中へ入って行く。樹林の中なので日は注さなく気持ちはいいのだが、登るにつれて暑くなり汗をかいてくる。タオル片手に一歩一歩ゆっくりのぼる。そろそろ休みたいなと思うが誰も言わない。さすが幹事さん皆の調整具合、体力をよく知っている。
40分ほど歩いてやっと幹事さんが「休みましょう」と休憩を告げた。ザックをおろして水を飲む。Dさんがへばった顔をしている。三月まで現場にいたが現在は内勤で車通勤しているとのこと。運動不足だな、なんて人のことは言えないが、当方は今回のために先週は奥只見丸山へスキーに行ったのだ。(でもそのつかれがまだ残っている。)
休んでいると後ろから中年おじさんが登ってきた。軽い足取りである。Aさんが「もう休憩ですよ」と言ったら時計をみて、「40分歩いていますから、いいところではありませんか」と言ってすいすいと行ってしまった。(内心は鍛錬が足りないなと思っているのでは。)
さあ、我らも行くかと出発。一列縦隊一番後方のCさんが「Dさん30分ごとに休憩しよう」と声をかける。一同、Eさんを先頭にゆっくり登る。本当、この山、ずうっと登りで水平がない、普通、登りでも途中に水平があり、そこで多少体力が回復するのだが、この山はずうっと登りである。Dさんがへばってきた。休み休み登る。30分と持たず25分で休憩。
AさんCさんEさんが写真を撮っている。Bこと私とDさんは座り込んで休憩である。景色は良い。目の前に富士山、眼下に西湖と見える。水を飲み、チョコレートを食べ、さあ出発。
登りの所要時間は150分、現在65分。残り3分の2だ頑張ろうと登っていくと、突然、Aさんが足をもみだした。「どうしたの?」と聞くと「左足がおかしい」という。登りの途中で休憩している人のリックを避けようとして、足をつったみたいである。歩いちゃ止まり、歩いちゃ止まりでしきりに足をもんでいる。休憩である。
25分歩いた。90分経過。半分超えた。足は右足もおかしいらしい。(この人も運動不足だな、バブルの頃は「夜の帝王」として風を切っていたそうだが?その名残か、通勤の帰りは歩きではなくバスかタクシーを利用しているらしい。
でも当人も意地があるのか再び歩く。廻りも心配である。肉離れでもおこしたら降りてこられない。全員ゆっくり歩く。25分歩いて休憩。幹事のEさん「縦走はやめて鬼が岳から今きた道を戻りましょう」と決断。さすが幹事!(引き返す勇気が大事なのである。と山の本に書いてあった。)
15分ほど歩くと開けた台地に出た。雪頭ケ岳である。ここから鬼が岳まで15分ほどである。Aさんを留守番に荷物をおいて、我ら4人は鬼が岳を目指すことにした。こういうのを薄情と言うのかな?と自問自答して。でも連れて行かなくて正解であった。狭い尾根あり、はしご有りで結構危険であった。
山頂は狭くあまり長くいられない。真正面に富士山、真下に西湖とロケーションは最高であった。富士山の上の方は残念ながら曇がかかっていた。証拠写真を撮り下山する。
下山途中、山で一番多い中年おばさん達が登ってきて、「下で仲間が待っていたわよ、あの人だめねえ」「もっと鍛えるように言いなさい」とか言いたい放題である。「あの人平気、降りられる」なんて言葉は一言もない。多分中年おばさん殺しのAさんがおばさん達にまぜっかえしたのだろう。あのおばさん達も我らと同じ団塊の世代なのに皆元気である。おじさん達は何をしているのかなあ。
昼食は雪頭ケ岳で食べ、時間もあるので一時間ほど休憩をとった。下りもきつく、ようするに下りだけで水平がないからだ。ひざががくがくする。2時間ほどで降りてきた。時刻は午後3時丁度いい。

次は、我らの主目的?「温泉でフィーバー」だあ。車で1時間半ほどかけて、「信玄の隠し湯下部温泉」へむかった。
宿着、四時半。玄関で、何泊かしている年嵩のおばさんがいて若いお兄さんであるつもりの我らに「どこから来たの、山へ登ったの」とか話しかけてくる。どうも今日はおばさん以外から声をかけられない。
さて、部屋に入り早速ビールで乾杯。なにしろ喉がかわいているので旨い。Aさんが「くさや」の瓶詰めを持ってきた。これがまた旨い。その他、色々なつまみがでてくる。まあ、これが目的でもあるのだから、ビールを5,6本飲んだ後、日本酒である。部屋も川に面した2階にあり二部屋続きで広い。
川のせせらぎに耳を傾け、新緑を愛で旨いさかなに旨い酒を飲む。それこそ、「いい汗かいて旨い酒を飲む」だ。そして木造がいかにも山の温泉宿らしい。湯も「武田信玄が傷を癒した名湯」とあって30度位の源泉湯と暖めた湯と二つあり、ゆっくり入れる。
夕食も仕切られた個室である。我ら、そんな高い予算で泊まっているわけでもないのに次から次へと料理がでてくる。これでまた酒が進んでしまう。今度は冷酒である。だれも、「もういいよ」と言う奴はいない。そこへ、隣室のおばあさんが「お酒があまったから」と1合徳利を1本もってきた。おいてすぐ帰るのかと思いしや、しばらく、ぺちゃくちゃしゃべり帰らない。若いお姉さんならいいのだが、ばあさんでは盛り上がらない。
さて、食後は温泉街へ繰り出しだ。湯治場的温泉街であり、静かである。宿はそれなりに混んでいるようだが、若者は少ないのかな。一回りして、これではちょっと物足りないので、カラオケスナックへ行こうということになったが、金を1万円しかもってきていない。宿に戻るのも面倒なので、入口で「1万円しかないのですがいいですか、オーバーしたら言ってください」と頼んだら「どうぞ」入れてくれた。
中には地元の人と思われる男のお客が1人いるだけ、後はマスターと可愛いウエイトレスが一人である。我ら5人、入ってしまうと1万円なんて頭にない。飲めや歌えのフィーバーである。そして、帰る時になんとおつりまでくれたのである。さすがにおつりを受け取らずに帰ってきた。
楽しい一夜であった。Aさんはきっとこの体力を皆に残し、至福の時をすごすために足を痛くしたのではないかと後になって思ったのである。  


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