2004年山温会秋の例会は、高層湿原の中で最も高所にあると云われる鬼怒沼湿原です。 草紅葉を吹きわたる高層湿原の涼風に吹かれ、秘湯奥鬼怒温泉郷の老舗「八丁の湯」の混浴露天風呂に浸かって日頃の疲れを癒し、ついでに目の保養をしようという魂胆であります。 コース 東北自動車道=日光宇都宮道路=今市I.C=大笹牧場=女夫淵温泉=宿送迎マイクロバス25分=八丁の湯 八丁の湯~オロオソロシの滝展望台~鬼怒沼湿原2040m~往路下山 歩行時間;5時間 所要時間;6時間 例会前日の夕方から夜半にかけて大型の台風22号が関東地方を直撃し、その翌早朝から山旅へ出掛けるなどということは、世間様から神経を疑われる状況にありました。 今回幹事のKOさん、さぁすがに直前まで実行するかどうか迷ったあげく、宿泊先の八丁の湯へ“明日は見送った方がいいですよ”と勧められることを期待して連絡したところ、 「こちらといたしましてはご予約いただいたお客様につきましては支度してお待ちするのみでございます」とのつれない返事のようでした。 意を決した幹事は、登山はともかくとして温泉と宴会だけでも挙行いたしたいと、暴風雨吹き荒れる最中に各メンバー宅に連絡したのであります。 これを聞いた各奥方様、“家の被害を心配する方が先決でしょうよ!あんたたちは何を考えているのよ!!”と、相当なる顰蹙を買ったようであります。日頃から我々の行動に非好意的な奥方様たち、今回その矛先は幹事であるKOさんへ向けられたようでした。 我が家では、 「今回幹事はKOさんだからね、俺はノータッチだからね、ほんとに何を考えているんだろうね?!」などと、自らの罪を軽くすべく幹事に責任をなすりつけ、思わず家内の悪態に相槌を発しておりました。 今回幹事さん、特段損な役回りでご苦労なことでした。 さて、レガシー3Lの持ち主sigeさん、大船を早立ちして各待ち合わせ場所を廻りメンバーを拾っていく手筈であります。 ところが、例会そのものを挙行するや否やに全神経を注いでいた幹事は、他の段取りなどはまるで眼中にありません。 何処で何時に待ち合わせするかは君たちで勝手に決めなさい、と云う態度。 メンバー側も、台風上陸は避けられないとの予報に直面してさえも無関心を装い、全責任を幹事に押し付けた弱味もありまして、幹事の手抜き・落ち度を責める訳にもいかないのでした。 急遽始発地の大船組~sigeさんと私とで協議し、それぞれの待ち合わせ場所と通過時間を連絡し、おかげで翌朝は順調に進み、最後に環状8号線と京王線の交差箇所付近で幹事のKOさんを拾って無事に5人が揃いました。 此処までは順調でしたが、その後練馬の関越道入口まで渋滞に巻き込まれてしまい予定時刻を大幅に超過、大泉ジャンクションから東京外環自動車道へ入った時点で、もはや宿の送迎バスに間に合わないことが確実視されました。 奥鬼怒温泉郷へのアクセスは自家用車で入れるのは女夫淵温泉の駐車場までで、その先の林道は許可車以外の立ち入りは禁止されています。宿の送迎バスを逃すと、八丁の湯まで90~100分渓流沿いの山道を歩かなければなりません。 そうなると天候の如何にかかわらず鈍足の我らにとりまして鬼怒沼湿原往復は厳しくなります。そのことを知ってか知らずしてか、この時点では誰も口に出しません。 川口ジャンクションから東北自動車道に入りますと、レガシー4WD3Lはその高性能を如何なく発揮し、120km/h以上の高速で疾駆いたします。カーナビの予定到着時刻は徐々に徐々に早まってまいりました。それでも現時点で40分以上の遅れです。 佐野S.Aで小休憩。ここでKOさん、やおら携帯を取り出し宿へ連絡を入れるようです。 「もしもし、本日お世話になるKOです。今宇都宮辺りを走っていますが、バスの時間にギリギリとなりそうです。万一の場合、少し待っていただくわけにいきませんか」 思わず私は、 「えっ?宇都宮はまだまだ50km以上先だよ!」 「シッ、いいからいいから」あわてて携帯を押さえてKOさんが制します。 宿側の返答は“今宇都宮だと確かにギリギリですね、マイクロバスには無線があるので連絡を入れて少し待たせましょう。近づいたらどの位遅れるか連絡ください”とのことでした。 「ほらね」KOさん“自分に任せておきなさい”とばかり自信満々です。 車は宇都宮ジャンクションで日光宇都宮道路に入り、今市インターで降ります。カーナビは川治温泉を経由する国道へと盛んに誘導しますが、少しでも時間を短縮したい我々は大笹牧場経由で栗山村川俣へショートカットする間道に入りました。 カーナビは何度もUターンを要求してきますがドライバーが無視し続けると、とうとうふてくされたように音声道案内を止めてしまいました。 この県道は一応舗装されていているものの山越えの抜け道で、大笹牧場まで狭く急なカーブが連続し、そうそうスピードは出せません。遅れを完全に取り戻すのは無理なようです。山頂の牧場辺りにくると携帯が通じ、KOさんおもむろに宿へ連絡を入れます。 「今黒部ダムです、10分遅れそうです、よろしくお願いします」 今回も奥の手を使っちゃいました。現在地からその黒部ダムへ至る15分ほどをサバ読んだ恰好です。 “バスはもう現地へ向かったので無線を飛ばしておきます、そこまで来ているなら無理せず気をつけてお出で下さい”サバを読まれたことなど露知らない宿側は親切に応えてくれました。 女夫淵温泉の駐車場は無料で広く、トイレの設備もあります。それでも紅葉シーズンの週末は満車となり、駐車場所探しに苦労しそうです。 結局我々は9:20発のバスを20分も遅らせてしまいました。前夜の台風にかかわらず席は8割がた埋まっていました。 出発時間より大分前から乗り込んでいた客も多いのでしょう、空いていた後方の席へ通路を移動しながら、白けた顔の乗客に我々は愛想を振り撒いたのでした。 |