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唐松岳 2696m ~五竜岳 2814m  2009/08/25~26


五竜側から唐松岳(やや左上部)への稜線、右端に五竜山荘


北アルプスのなかでは比較的手軽に大展望が楽しめ、高山植物が豊富なことで知られる八方尾根唐松岳。好天気の中、長年の友人kennzouさんと二人で歩いてきました。
八方尾根から唐松岳は快調でした。ところが翌日の五竜岳アタックでは足が上がらず、長い下山路を考えて体力温存のため、山頂を目前にして引き返すことに。相棒には申し訳ないことでした。
唐松山荘から五竜への縦走路は、いきなり岩稜の嶮路が続き、緊張が強いられました。
下山コースの遠見尾根は長大、しかも上部は嶮しい。 歩いても歩いてもたどり着かない道に、しまいには嫌気がさしました。
自分にとって1泊では無理な計画でした。五竜山荘にもう一泊すれば余裕が生まれたことでしょう。
変化に富み展望も素晴らしい遠見尾根、しかしもうコリゴリです。
唐松岳はいい山でした。軟弱登山者には唐松岳往復登山で充分でした。

コース&タイム
一日目;
(あずさ3号)11:28白馬駅11:35=バス=八方11:45~ゴンドラ駅12:10=ゴンドラ・リフト=12:30八方池山荘
八方池山荘12:40~13:40八方池14:00~15:10丸山15:20~16:10唐松山荘(泊)~山頂往復50分(山頂滞在20分)
所要時間;4時間20分、歩行時間;3時間半
二日目;
唐松山荘5:40~鎖場通過~6:40最低鞍部(軽食)7:00~8:20五竜山荘8:40~五竜中腹で引き返す~9:40五竜山荘
五竜山荘(昼食)10:20~(休憩10分)~12:50中遠見13:00~(休憩10分)~14:40アルプス平
アルプス平=ゴンドラ=遠見(入浴エスカルプラザ)16:20=シャトルバス=16:25神城駅
所要時間;9時間、歩行時間;7時間10分



八方尾根
私は何年か前に雪の八方尾根を第三ケルンまで軽アイゼンを装着し歩いたことがあった。
そこから眺めた尾根の上部は、山頂付近まで穏やかな雪面が続き、スキーやスノーボードを担いだグループが丸山ケルンを目指して登って行く。その姿を見て、 八方尾根を詰めるのは案外たやすいのではというイメージが湧いた。
雪面の傾斜は均一化され、広い尾根のどこを歩くのも自由である。展望雄大な第三ケルンまで難なく到達した私は、さらに上まで登り詰めたい気持が募った。 未経験の雪山は無理としても、夏に再び挑戦する意欲を強くしたのだ。
今年になって日常的に自由の身となった私は、小屋が混雑する旧盆や週末にわざわざ登山する気はない。 都合よく平日が休日となっていた古くからの友人kennzouさんを誘い、八方尾根唐松岳登山がようやく今回実現した。 往路をそのまま下山するのでは物足りないので、翌日は五竜経由で遠見尾根を下山する計画とした。

松本から大糸線に乗り入れ毎日運行している特急は現在南小谷行きの【あずさ3号】だけである。 その貴重な列車だが、登山客は信濃大町駅迄に大方降りてしまい、ガラガラとなった車両から白馬駅ホームに降り立った登山客は僅かだった。
駅前から列車に接続している八方行きバスは十数人を乗せて発車し5~6分で終点八方に到着してしまう。
土産物や宿泊施設の多い小道をダラダラと下り、アダムと呼ばれるゴンドラ乗り場へ向かう。何組かの登山者とすれ違った。 今朝唐松小屋を立ち、のんびり下山してきたのだろう。
20分ほどでゴンドラ乗り場に着いた。 長いゴンドラとリフト2本を乗り継ぐ。グングン涼しさが増す。標高1800mまで汗一つかかず一気に上がってしまった。文明の利器はありがたい。
リフトの終点は長野オリンピック滑降コースのスタート地点、八方尾根は日本有数のスキーゲレンデである。
ここ第一ケルンは尾根を挟んで鹿島槍と白馬三山、振り返ると妙高戸隠など信州の高峰群、などなど素晴らしい眺望が開ける場所、だが本日は皆雲の中。 見上げる八方尾根も中腹から上は雲の中である。

八方池山荘前で仕度を済ませて出発した。 歩き易かった雪道の印象が強い私には、ゴロゴロとした岩屑道が案外歩きにくい。
八方池までは観光客やハイカーが大勢い歩いている。たくさんの花々が咲いていて歓声が飛ぶ。 実は少々時期が遅いらしい。一輪のマツムシソウを大切に撮影しているご婦人がいた。八方池上部には群落が見られたのに。
八方池の先からはそれまでの遊歩道と違って山道らしくなり、昼下がりの登山道には人の気配が途絶えた。ここから山荘までに我々が出会った登山者は僅かだった。
高度が上がるに連れて森林限界に逆らうようにダケカンバの林が出現し、珍しいカンバの大木が其処彼処に存在感を見せていた。
以前に訪ねた際はスキーヤーやボーダーが尾根の雪面を一直線に登っていくのを見たが、夏山道はクネクネと蛇行し、丸山まで思いのほか遠い。
我々はゆっくり、あまり休まず、標準時間を若干上回るペースでガスの中を登る。雲を突き抜けることを期待したが難しいようだ。

八方尾根


唐松岳
丸山ケルンから先は尾根が切り立ち稜線上を歩くようになる。
一見して山慣れた女性が一人一眼レフを構えて佇み、一瞬の雲の切れ目に出現する不帰ノ嶮の大岩壁を狙っていた。
八方尾根最上部に詰め上がるピークは直登ルートが廃道となっていて、山腹の雪渓上部を左から右に巻き込んで行く。崩れた上部には浮石が多くイヤな区間である。 そのピークをグルリと大きく回り込むと赤い唐松山荘に着いた。
受付を済ませ、部屋は別棟の一番奥を指定された。寝室は蚕棚二段式で、枕の数から一区画定員は12人のようだ。 六畳余りのスペースに先客は年配男性一人だけで、16:00過ぎに到着した我々がその日最後の客だった。 これで今夜はゆったりした寝床が確実になった。山小屋で一番気になる点である。本日の客は別棟に集約させたようで、定員の5割程度づつ割り振られた区画は幾分余裕があり、総数50~60人位だろう、年配者が多い。
我々は空身となってまずは山頂を踏むことにした。相変わらずガスが周囲にまとわりついているが、時折明るくなって眺望が効く瞬間が訪れる。僅かなチャンスに期待して暫く山頂に滞在するつもりで行く。 幸い夕食は2回目の5:50からなので時間には余裕があっのだ。
山頂まで20分足らず、ウインドブレーカーを羽織っていても寒い。結局不帰ノ嶮の一部が姿を現わしただけで明朝に期待し早々に下山した。
夕食は品数が多く工夫されたもの、我々はビールで乾杯、続いて500ccペットポトルに入れ替え持参した日本酒を茶碗に注ぐ。 たちまち隣の客が酒に気付いて羨む。
"ごめんなさい、おすそ分けするほどの量がありません。次回からは担いできて下さいな"
そう云う我々は別のカップルからワインを頂戴した。
なにやら外が騒がしい。急速に霧が晴れつつあって周囲の山々が夕照に輝きだしていた。我々は大いにあせってご飯をかきこみ、カメラを取りに引き返したものだった。
宿泊客全員がこの素晴らしい一時を共有しシャッターを押しあう。山小屋ならではの光景である。やがて夜空に星が瞬く。明日への期待が大いに膨らんだ。
飲食禁止の寝床で紙パックの酒をストローで飲む。高校修学旅行中に隠れて酒を飲む気分である。 相棒は盛んに隣の年配者とおしゃべりしていた。
シッ、シマッタ!!21時の消灯間際に突然私は忘れ物に気がついた。朝食に代えて弁当を受付時に注文しておいたのだが、その受取時間は18:30だった。

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