コース;中之条=バス=駒岩~石尊山~高田山~わらび峠~四万温泉 歩行時間;4時間 所要時間;5時間半 2001年山温会の〆は四万温泉で行うことになった。長老sigeさんの発案である。鉄道オタクのsigeさんは、時折駅などで旅行パンフを立ち読みし、思い付きでツァーを企画することが稀にあるのだった。 今回のポイントは忘年会を兼ねた四万温泉の老舗高級旅館【たむら】の宿泊券とJR特急乗車券往復がセットされ、しかも12月中旬までなら週末もOKと云う格安パックを利用することにあった。 この年、山温会秋の例会は、八ヶ岳東天狗登山&本沢温泉で挙行された。それから日が浅いある日、反省会と称する飲み会の席上で、sigeさんが宝物を開帳するかの如く提示したツアーパンフ、それを見た我々は即座に全員賛同したのだった。 今年の忘年会はこれで決まった。問題は山である。我々の宿泊例会では、ハイキングで汗をかき、温泉で汗を流し、ギンギン冷えたビールで乾杯することを掟としている。 その点指摘されると、まってましたとばかりにやおらsigeさんは折り畳んだ紙を広げて見せた。中之条周辺の1/25000地形図だった。四万温泉に近い国道の西側の山域、1212mの標高点にマーキングされていて、【高田山】とある。皆初めて聞く名であった。 sigeさんの説明によると、 「今回は中之条までJR特急利用なので、その先のバス路線沿いにある低山を地形図上で適当に探したところ、高田山がよさそうである」とのことだ。 地形図によると山道は通じているようだが、当時はネット検索が今ほど充実していなかった年代、山の下調べを誰もしないままに決まってしまった。“何とかなるさ”全員いいかげんなのである。 ところで長老のsigeさん、セッカチと面倒くさがり的性格は生まれながら身に染みついたもの、実際の労役~ビュープラザでクーポンの購入、特急座席指定券の手配、費用の精算等~は最年少(当時50才)の作者に下請けしてしまう。 椎名誠の「怪しい探検隊」の世界では、野外活動に於いてドレイに労役を一切押しつけるようだが、我が山温会では最年少の作者が(僅か2~3年の差で)そのドレイ役を未来永劫担わねばならない運命にあるようだ。 上野駅で待ち合わせし、7:20発の草津1号に乗車する。 所定の席につくと座席を回転しBOXシートに作り替え、早速皆にビールを勧めるAKIOさん、幸か不幸か私だけ一人ポツンと離れた席である。 かつて、ハイキングに向かう朝の列車で我々は宴会を始め、ツマミにトビウオのクサヤをビンから取り出したAKIOさん、車両一杯に漂う香り(異臭)に周囲の乗客多数から白目を向けられた経験を思い出し、一人離れている安心感と一抹の寂しさが忍び寄る。 列車は新前橋駅で水上へ向かう車両を切り離し、渋川から吾妻線へ入る。途端に列車は減速しローカルムードが漂った。だが沿線は意外にも市街地が多い。 下車駅中之条ではバスの乗り換え時間が僅かしかないことが念頭にある私は、車内でトイレを済ませておくよう皆に伝えておく。上野から2時間ほどで中之条に着いた。 四万温泉行き関越交通の古いバスは、到着した草津1号の乗客を急かすようにエンジンを掛けて待ち構え、乗車が済むやいなや発車した。バスは四万川に沿って北上する。小さなダム湖を過ぎると山間の色合いが濃くなった。 バスは旧道に回り込み、中之条から20分ほどで高田山登山口がある駒岩に着いた。 駒岩バス停付近には案内看板が設置されているので迷う心配はない。車の場合は近くの公民館に駐車する。 登山口には山ヒル注意の看板が出ていた。サルの集団も要注意のようだ。なかなか怖いコースであるが、12月に入っているので心配ないだろう。明瞭な登山道を登る。小さな鳥居がある。水場もあるが汲む気がしないチョロチョロとした貧しい流れである。 石尊山(セキソンサン)には小さな祠があり、その名からしても地元信仰の山であることが窺われた。山頂は狭いが見晴らしの良い場所、南側が切れ落ちている。眼下に四万湖が望まれた。ここまでは90分ほどの行程で、不安なく登ってこれた。 石尊山から高田山までの稜線はヤセ尾根で難所が連続する。マイナールートなので鎖などの補助具は全く設置されていない。これが本来の山道かもしれないが、足がすくむ箇所が多い。崖の上り下りが連続する。 先行していた家族パーティが最初の崖下りの難所で引き返してしまった。 多少山慣れしている私が先頭で後ろ向きに10mほどの崖を下ろうとすると、 「ヌマッチャン、ちょと待った、今ザイルを出すから」kennzouさんが声を掛けてきた。 「オオッ!!すばらしい、さすがkennzouさん」ザイルを垂らせば安心感が格段に違う。 しかしkennzouさんがザックから取り出したザイルは、ゥン??大縄跳びに使う4~5mの縄だった。 「大波小波でぐるっと回してにゃんこの目」 ここままでヒィーヒィーヨロヨロと最後尾を着いてきたKJさん、崖登りになると途端に張り切り先頭に立つ。この御仁は脚力より腕力が勝るのだった。 石尊山から高田山まで40分の行程。嶮しい道程だがそれほど長くはない。高田山山頂は北側の展望が開け、谷川岳、白砂山が既に真っ白に冠雪していた。我々の他には単独の男性が休んでいたが、すぐに引き返して行った。 車利用の登山だと往復コースとせざるを得ないが、石尊山~高田山を往復するのは厳しい。時間的にも上り下り変わらないだろう。 kennzouさんがトン汁をふるまってくれた。冷えた山頂の空気の中、熱いトン汁は実に旨い。これでザイルの一件は帳消しにしてあげる。 わらび峠への下山道は山腹の急下降で始まる。転落せぬよう草木を掴みながらの降下にしばらく耐えると傾斜が緩み歩きやすい道になった。だが足元がぬかるんでいて悪い。靴やズボンの裾を汚してしまう。初冬の午後は霜解け道となるのかも知れない。 降り立ったわらび峠はユニークな標識と鳥居が建つが、地形としては峠らしからぬピーク状の場所。標高は900mを超えていて、山頂からは300mほど下った地点である。 ここから先は長い林道を標高650mの四万温泉へダラダラクネクネと下る。一旦国道へ出てさらに川沿いの温泉街の道に下る。我々はパーティの体をなさずバラバラな数百メートルの長い隊列になっていたので、温泉街の前で隊列を整えた。 共同浴場の河原の湯を過ぎると、湯の町風情溢れる道は上り坂となり、我々は自然にたむら玄関先へと導かれていった。 | ||
温泉街のバス停から田村坂をのぼると「源泉掛け流しの湯 温泉三昧の宿 四万たむら温泉旅館」のシンボルであるかやぶき屋根が目にとびこんでくる。 遠く室町時代から湯治場として栄え、五百年もの長い間、多くの人々が訪れ、今なお愛され続ける温泉郷、四万たむら温泉旅館。 玄関にかかる「温泉宿」の木の看板を目にした瞬間、くつろぎの空間があなたを包みます。 豊富な自家源泉をかけ流しするお風呂は温泉三昧の宿に恥じぬ、やすらぎのひと時をお客様に提供致しております。 しばし、このやすらぎに身をまかせ、どうぞごゆっくりとお過ごしください。 こんこんと湧く、たむらの森のお湯は、毎分1600~1800リットルのたっぷりとした湧出量を誇る「かけ流し」の湯。 泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉、効能は胃腸病・動脈硬化症・やけど・切り傷・慢性皮膚病など。 古くから胃腸病の名湯として知られる四万温泉が今、美人の湯として注目を浴びており、 お肌に大変良いとされる、メタケイ酸が通常の温泉は1000mg中50mgでございますが、 当館の源泉には、3倍以上の174mg含まれており、それが、お肌美人になると評判を呼んでおります。 |
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四万温泉の老舗高級旅館たむら。宿が自慢する通り、趣の異なる大きな風呂が男女別に内外含めて8箇所あり、豊富な湯量を誇っている。 一日で全部入るのは大変です。姉妹店のグランドホテル、こちらの温泉も無料で利用できますが、とてもじゃないけど入りきれません。 小さいながら格式高い玄関からは想像つかないほど奥が広く迷路のような建物は、幾何学的コンクリートの建物にはない和風大旅館の面白さがあった。 我々の大げさなザックや服装が汚れているのを見て、出迎えてくれた従業員男女数人から 「大変でございましたね、どちらの山ですか?」と興味深く聞かれた。だが、 「高田山です」との答えに、たちまちナーンダという顔をされてしまった。それでも靴の汚れや服の汚れなどにイヤな顔一つ見せず歓迎し、労をねぎらってくれた。 格安パック客の食事は、一般客とは別の離れた小広間で~おそらくメニューも大分違うのだろう~少ない予算なりに工夫されて美味しいものだった。 四万温泉は山間のひなびた温泉場を想像していたが、なかなか華やかでありました。 |