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雪の八方尾根  第三ケルン2086m  2005/03/10



八方尾根稜線から眺めた五龍岳(2814m)



 朝の8時に運行開始された全長約2Kmの6人乗りゴンドラ「アダム」で、まずは兎平へ向かった。
乗り込む時はカメのようにゆっくり動いていたゴンドラは、拾数秒後に主ロープを掴み、ガクンと撃ち出されたように急激に加速する。
グングンと高度が上がり、視界が見る間に広がってきた。遊園地の乗り物よりよほど面白い。
8分の空中散歩で着いた兎平は八方尾根スキー場の中心街で、たくさんのリフトの乗り継ぎ場となっていて、賑やかな場所である。
リフトが動き始めてまだ30分ほどしか経過していないのだが、かなりの人出である。
今日は全国規模の競技会が一部のゲレンデで開催されるようだ。
ここからさらに上へ向かうリフトは2系統ある。
乗り場までの距離が近いゲレンデの左端のリフトを利用することにしたが、それでもゲレンデ内を少し下るので、安全な場所でアイゼン・スパッツを着用することにした。
出札口へ行くと、
「このリフトでは下りの利用はできません」と係員が言う。
困った顔の我々を見て、反対側のリフトは下り利用が可能なことを直ぐに教えてくれたので、ホットした。
係員は我々がリフト乗車に不慣れなことを見て取り、二人掛けシートを一人で使用するよう指示し、乗り込むタイミングをマンツーマンで合図してくれた。
まず私が、続いて直ぐ後ろのシートに家内が乗った。
私はザックを横に置いて手で押さえ、もう片方の手で支柱に掴まった。振り返ると家内がしきりに私に向かって合図している。私は転落防止用バーを降ろしていなかったのだ。
リフトを降りたら素早く移動しないと後ろのシートに当り危険である。アイゼンを既に着けていたので、滑りやすい足元だが、不安なく行動でき、この点は正しかった。
30年振り位だろうか、スキーリフトに乗ったのは。私にとっては、なかなかスリルがあり愉快であった。
さらにもう1本リフトを乗り継いでゲレンデの最上部に着いた。
時間は9:00を少し過ぎていた。

「ゴンドラにはスキー板を差し込む場所が外側にあったが、リフトでは何処に差すのかね?」と私は家内に聞いてみた。
「なに馬鹿なことを言っているのよ。足に着けたまま乗るのに決まっているじゃないの!」 と一喝され、蔑まれてしまった。
家内は昨年の今頃大腸ガンの手術をし、その後運動らしい運動から遠ざかっているので、今回のトレッキングには不安がある。目的地まで無理なようなら、そこから引き返すことに極めていた。
幸い今の様子では、精神面については大丈夫そうである。

 到着したゲレンデの最上部は標高1800m あり、展望は一段と開けている。
北方向には白馬三山が堂々と、南方向には奥に特徴ある双耳峰の鹿島槍岳・その手前には荒々しい五龍岳が聳えている。
青空の下、高峰群は白一色である。
ここまで上がってくるスキーヤーやボーダーたちは相当経験を積んでいる上級者に限られている。それでも皆一様に滑走を休止し、喚声をあげながら暫し景色に見とれ、お互い写真を撮り合っている。
我々も感嘆しながら景色に見とれていると、
「これから山で写真ですか、今日は最高ですね」とスキーヤーから声をかけられた。
私のザックには大型の三脚がくくりつけられている。
だが、ふと周囲を見渡すと、登山仕度は我々2人だけなのに気が付き、不安を覚えた。


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