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蓼 科 八子ヶ峰 2014/07/22


高原牧場のような八子ヶ峰稜線。奥は車山高原。


八子ヶ峰(ヤシガミネ)は八ヶ岳の西側に、蓼科山からスズラン峠へ落ちた山裾が再び盛り上がり、標高1800m程度のなだらかな稜線を起こし、白樺湖へ落ち込む。
今回は蓼科湖側の親湯から登り、八子ヶ峰をミニ縦走、白樺湖へ下山する計画だったのだが。
親湯ホテルの先が登山口、稜線まで2時間ほどのなかなかきつい登りが連続す。
稜線に出ると、そこは大パノラマの高原。真夏であっても標高1800mの涼風が吹き抜けてさわやかである。
北側の山腹はスキー場。小さな起伏をいくつか乗り越えて八子ヶ峰本峰に到着した。
山頂から道を間違え、東急が切り開いた東急別荘地へ下るコースに迷い込んでしまった。引き返しても白樺湖のバスに間に合わない。
だが、下山地の東急蓼科別荘地にはバス路線がない。

コース&タイム;
茅野駅10:25=アルピコバス=親湯入口11:10~ヒュッテ13:20~東峰1869m 13:40~14:10八子ヶ峰1833m
八子ヶ峰14:30~別荘地15:20~センターハウス15:50~時間調整含~東急リゾート16:30=ホテルシャトルバス=17:10茅野駅
所要時間;4時間40分 ※ただし親湯登山口~別荘地センターハウスまでの時間。途中写真撮影などのロスタイムがあり、正味歩行時間は4時間たらず。



八王子始発松本行き普通列車は大月を過ぎると通勤時間帯と重なり甲府までは混雑する。甲府から先はボックス席を一人で独占した。 茅野までおよそ3時間、なかなか疲れる。カンビール一とワンカップを1本づつ消費した。
バスの発車まで1時間もある。帰りに立ち寄るソバ屋の見当をつけておく。駅前は飲食店に不自由はない。 時間があるので観光案内所に立ち寄ったところ、精密工作品の展示スペースがあった。さすが精密工作機械の街である。
八ヶ岳ロープウェー(旧ピラタスロープウェー)行きのアルピコ交通バスはほぼ満席、客の多くは登山者で北八ツ方面を目指すのだろう。7月の最終土曜からは夏ダイヤとなり、本数が増えるようだ。
親湯入口で降りたのは私一人だった。

渓谷沿いの道を行く。親湯ホテルの専用道みたいなものである。親湯ホテルは高級感溢れるリゾートホテル。オヤユでなくシンユと読む。
ホテルの少し上流に架設されたハイカー用の橋が登山口である。橋の手前には祠があったので、何が祀られているのかを知らないまま、登山の安全を祈願する。
道標には伊藤左千夫の歌碑とあり、八子ヶ峰を指すものは見当たらない。ホテルの裏側から山道となり15分ほどで伊藤左千夫の歌碑が建つ場所に出た。 不思議な場所に建てたものだ。謂れがあるにしても、人目に付く場所ではない。この歌碑のことを知る人は稀だろう。歌碑の裏側へ道は延びている。

車道を横切る。別荘地の最上部へ通じる道のようだ。ここで白樺湖を指す道標に初めて出会った。信濃路自然歩道とあり、八ヶ岳山麓スーパートレイルとも記されていた。
やがて道は広い山腹から尾根に乗り、尾根が痩せるに従い傾斜が増す。苦しい。登山口からここまで上りの連続である。P1811点で東急トレッキングコースと合流し、ようやく傾斜が緩んだ。
視界が突然開けた。蓼科山や八ヶ岳の峰々が目前に迫る。さらに進むと八子ヶ峰の稜線が。想像以上に伸びやかで嬉しくなった。ヒュッテ アルビレオの赤い屋根が近い。 蓼科山登山口からの道と合流し、本日初めて別の登山グループと遭遇した。
周囲は森林限界を抜けたかのような草原となる。
休業中と云うよりは廃業したかに見える荒れたヒュッテの周囲にツァー登山客が休憩中。白樺湖から上り、バスを回送して、峠に降りるようだ。楽しそうなコースである。 団体さんは騒々しいので先へ進み、本日の最高点東峰付近の木陰で休憩とした。

八子ヶ峰山頂、蓼科山が大きい。ここで道を間違えた。

稜線上は木陰が少ない。標高1800mの稜線は平地に比べ10℃気温が低い計算で、吹きわたる風は涼しいものの、遮るものない高原の日差しは厳しい。
涼しく歩くには日傘がとても有効である。使用は足元が良く穏やかな地形で風の弱い日に限られる。霧ケ峰・車山高原も日傘が有効である。
東峰から30分ほどで八子ヶ峰山頂に到着。大パノラマ。白樺湖の一部分が見える。
私は白樺湖を眼下に広大な草原を下る終盤を本コース一番の楽しみにしていた。
白樺湖へ下るには道標が示すように山頂から右に折れなければならない。ところがこの道標の位置が高すぎて目に入らない。
写真の右端から山頂に至る平坦な稜線が歩いてきたコース、写真で山頂のやや手前が撮影点、さらに手前へと一直線に下るのが主コースに見えませんか?!
以上のことは、たまたま撮影したこの山頂写真を見て後に検証したものである。

私は何の疑いもなく直線コースへと進んでしまった。
うすうす方向がおかしいことに気が付いていた。スキー場の草原を下るはずがとうとう森林帯に飛び込む。道を間違えたことを悟った。地図で確認したところ、東急トレッキングコースを下っていた。
既に山頂から20分下っていた。引き返すことを考えたが、上り返しに30分以上、白樺湖のバスに間に合わないことは確実で、次の便は最終の6時過ぎ、【あずさ号】で帰るか茅野駅周辺で泊まるか?
紛らわしいコースを切り開いた東急が腹立たしい。自分の失敗が腹立たしい。引き返すのは尚腹立たしい。東急別荘地へ下ろう、なんとかなるさ!

「こんにちは、管理事務所へはどう行きますか?」管理事務所でタクシーを呼ぶことに腹を決めた私は庭で薪割りをしていた別荘オーナーに尋ねた。夏休みに入り別荘にはチラホラ人の気配がした。
「管理事務所? センターハウスですかね、歩いて行かれます?」怪訝そうな顔をしてオーナーのオヤジさん、近づいてきて私の山支度を確認したようだ。初老の紳士。私は事情を説明した。
「センターハウスでタクシーは呼べますよ、だけど此処は別荘地の最奥地、歩いたら3~4kmはあります。ちょっと大変ですね」私は送ってもらえるかもと、期待を抱く。
「あ、そうだ、別荘地専用のシャトルバスが1日3本運行されていて、最終便に間に合うかもしれないです、センターハウスで聞いたら好いです、急いだ方がいいです」 期待は裏切られたものの、ありがたい情報を得て私は灼熱の車道を急いで下った。
夏のシーズンに突入したばかりのセンターハウス、スタッフはてんてこまい。電話は鳴りっぱなし。それでも一人の女性スタッフが親切に対応してくれた。
「申し訳ありません、最終バスは10分前に出てしまいました。どうしましょう、タクシー呼びますか?」落胆はなはだしく、途端に汗が噴き出した。その情けない私の姿を見た女性スタッフは、
「別荘のバスはもうありませんが、ホテル専用のバスがあるかも知れないです。此処では分からないのでホテルで尋ねたら好いですよ」と、続けた。私は新たな希望が湧いてきた。
一旦覚悟はしたもののタクシー代7000~8000円の出費は痛い。
「この先500mくらいです、蓼科東急リゾートの看板が出ています。それにホテルならタクシーもすぐ来ますよ」

黒の背広にネクタイを着用したホテル支配人はシャトルバスの運行を確認し、最終便に私の便乗を快諾してくれた(ように見えた)。
待ち時間が50分ほどある。ホールや玄関先で待つのは気が引けるので別荘地内をブラつくと、清流があり、木蔭にベンチも、そしてなによりビールの自販機が設置されていた。
冷たい水で手や顔を洗い、喉をうるおし、いまやすっかり幸せ気分となりました。
結局帰路のバス代1000円が浮いてしまった。
たった一人の客(?)を乗せたマイクロバスにホテルスタッフの見送りはありませんでした。


稜線はお花畑、時期は少し早め。
それでもエーデルワイス(ウスユキソウ)、カワラナデシコなど10種類ほど出会いました


 

 

 

2014/8/3 掲載

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