HOME
大山南稜 1252m 2011/06/29


古道の趣が濃い蓑毛裏参道

コース&タイム;
ヤビツ峠9:10~10:20大山山頂10:40~11:40蓑毛越え12:00~12:40不動越12:50~13:30才戸入口バス停
所要時間;4時間20分、歩行時間;3時間半


大山南稜は東丹沢きっての長大な尾根であるが、人気は薄いようだ。 稜線上に電波塔が林立し、山の趣が損なわれていることが嫌われる主な理由だろう。
海抜数十メートルの鶴巻温泉(または秦野駅)から善波峠・高取山を経て山頂まで、水平距離12km、累積高低差は1300mを超える、なかなかの健脚コースでもある。
私は部分的には歩いているものの、いずれ歩き通してみたいとかねて狙っていたコースである。ただし自分の脚力では下りコース以外の選択肢はない。


ヤビツ峠行きバスは運休される場合も珍しくないが、今日は十数人の登山客を乗せて秦野駅北口を定刻に発車した。
仮に運休ならヤビツ峠からの山頂は省略し、蓑毛から蓑毛越えに達し南稜に取りつくつもりだった。 その日は、凌ぎやすいという云う予報の期待に反し猛暑となり、結果的には始めから蓑毛行き早朝のバス便を利用して、そちらのコースを凌ぎやすい時間帯から辿るべきだった。
バスは国道246号線を横断し名古木の集落に入る。名古木=ナガヌキと読む。私は長年何の疑いもなくナコギと呼んでいた。不思議な地名である。
山岳道路に入るとバスはホーンを頻繁に鳴らす。今日はダンプの通行が大変多い。
バスを降り身支度のない私は直ぐに歩きだした。集団の先頭である。途中いつものことながら何組かに先を譲り70分ほどで山頂に着いた。マズマズである。私にとって、このイタツミ尾根は脚力の衰えを測るモノサシなのだ。
山頂は雲がまとわりついて視界がなかったものの、山頂を除いた全般に青空が広がっていた。暑さ凌ぎには前日の予報通り曇天が望ましかったのだが。


山頂から表参道を下る。とぎれとぎれに下社から登ってくる登山者は一様に大汗で苦しんでいる。この道は傾斜が急で崩れた石段が多く、上りも下りも大変なのだ。
八合目あたりで表参道から分かれて右折し裏参道を蓑毛方向へ向かう。蓑毛越えまでは何度か踏んだ道、慣れてはいても歩きにくいことに変わりはない。
標高が下がるのと陽が高くなるのとが同時進行となって体感温度がグングン増す。無風が辛い。
下社への分岐を通過すると傾斜が緩み歩きやすくなる。登山道脇には古い石碑や風化した石仏が時折見受けられ、古道の趣が濃い区間である。
蓑毛越え(ミノゲゴエ)は峠状でベンチがある休憩地だが、展望には恵まれない。左に折れて山腹を巻くと20分あまりで下社に出る。右へ下ると40分程で蓑毛バス停へ出る。
暑さにまいった私は此処が思案のしどころ、とりあえずベンチに腰かけた。弘法山まで行く気力は既に失せた。一L用意した水は半分以上消費していた。
だがここから高取山までが私の未踏区間である、本日のメイン区間を目前に敗退することは残念無念であります。伊勢原側か秦野側どちらかの里へ逃げることを前提に、高取山付近まで進むことに結局決めた。
先ほどから気になることがある。コンビニ弁当のゴミである。私は山で初めて他人のゴミを拾って持ち帰ることになった。近年山でゴミを見かけることはない。他人のゴミを持ち帰るのは今回が最初で最後、金輪際ご免こうむる。


山頂に大きなパラボナアンテナが設置されている浅間山は山腹を巻く。浅間山から先はなだらかな幅の広い道が続く。登山道というより車の通行さえ可能に思える林道の様相である。
広い道に太陽が真上となって木陰を拾うことが難しい。この厳しい最中に間伐枝打ち作業が行われていた。林業は本当に大変である。
登り返した小ピークの行く手に高取山が低山とは思えない大きな山容で立ちはだかっていた。
“これは相当な登り返しだな、山頂に辿り着く前に倒れるだろうな”
少し下って林道を横断すると鞍部に出た。高取山への取り付き地点である。標識があり、高取山へ0.95km・善波峠へ3.65kmとある。
そして才戸入口バス停へ2kmと秦野側を指した標識もあった。此処を不動越(フドウゴエ)と云う。
切り札とも云うべき最後の逃げ時・逃げ場所にやってきた。下りの山道2kmを30~40分と踏んだ私は、森の木陰に腰をおろし、一口分だけを残し、残りの水は全部飲んでしまった。
まとまった水分補給と木陰の休息で元気を取り戻した私は、東京カントリーのゴルフコース沿いに降り、獣除けのネットを潜ると人里となり、30分あまりでバス停に着いた。
10分ほど待って乗った秦野行きバスはすいていた。
座席毎の天井に付いている冷房の吹き出し口を前後の席も合わせて自分の頭や顔に集中させ、帽子を脱いで涼んでいたところ、私はバスを降りてから帽子を忘れてしまったことに気がついた。

2011/07/03 記

索引へ 、 登山歴へ