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大 山 ヤビツ峠~不動尻コース 2010/05/17


唐沢峠へ向かうヤセ尾根の道


観光気分のハイカーでいつも賑わっている大山も、不動尻へ下るコースは静かな山道。
下山後に長い林道を歩くことから一般ハイカーには敬遠されるようだが、新緑の里山歩きは捨てたものではない。
大山の裏側は、梅の木尾根・北尾根・唐沢川など、観光ハイキングコースの表側とは全く異なり、美しい樹林の静かな山道を味わうことができる。
今回は、五月晴れで眩しい新緑の中、ご近所おじさん3名で不動尻コースを歩いた。下山後のビール・冷酒飲み放題付きのセットプランである。

コース&タイム
ヤビツ峠9:20~(休憩10分)~10:50山頂1252m(昼食休憩)11:30~12:30唐沢峠12:40~
13:30不動尻13:40~林道歩き~広沢寺玉翠楼前~14:50広沢寺(コウタクジ)温泉入口バス停
所要時間;5時間30分、歩行時間;4時間20分



小田急秦野駅発のヤビツ峠行き午前のバスは 平日8:18 の1本だけ(当時)で大変混みあう。山間部路線用の小型車両は混雑に拍車をかけ、無理やり全員詰め込んだので車内は足の踏み場もない。
ドル箱路線なのだから、せめて7時台と8時台、合わせて2本運行してほしいと切に願う。
身動き取れないままカーブが連続する山道を50分も耐えるのは、その後の登山にできるだけ体力を温存したい軟弱な高齢者ハイカーにとっては辛いものがあった。
我らは3人パーティなのでタクシーを利用する手もあったのだが、丹沢大山フリーパスを購入しているのでそれも切ない話なのだ。
乗客の大半は中高年登山客で、若者は若干見受けられた程度である。多くの客は丹沢表尾根を目指すのだろう、ヤビツ峠から富士見橋方向へと足早に下って行き、大山へ向かうハイカーは乗客の2~3割で一様にのんびりしている。
行程にゆとりのある我々もゆっくりと仕度し、集団最後尾からの出発となった。やがて7~8名の団体に追いついて道を譲られ、我々を上回るのんびりペースのグループがいることに安堵した。
その後もゆっくりとしたペースで登り、途中1回の休憩を含めて1時間半ほどかかって山頂へ着いた。
薫風そよぐ山道は真に心地良い。初期高齢者にとって標準コースタイムの1時間は早すぎて参考タイムにもならない。この新鮮な緑の山道を先急ぐ必要性は全く見い出せないのだ。
山頂の奥社裏手へ公衆トイレ脇から回りこむ。案外知られていない好展望の場所である。 この季節お決まりのように遠景は霞んでいたが、幸運にも富士山は姿を現していた。今年は各地で降雪量が多かったのだが、我が富士山もまだまだ大きな雪の冠を抱いていた。
今日の山頂は人が少なめで、休憩場所にはことかかない。東側に一段降りた相模平野を一望する展望地のベンチで我々は早めの昼食とし、富士山談義に話が弾むのだった。


山頂からは、見晴らし台経由で下社に戻り、ケーブルカーで下山するのが一般的である。不動尻へ向かうにはそのメイン登山道を少し下り左に分岐する。道は急降下し繁華街のような山頂からグングンと遠ざかり、静けさを深めていく。
傾斜がゆるむと山頂へ延びているケーブルの下を通過し無粋に感じるが、これは山頂アンテナ施設の電源用高圧線である。この辺りは灌木帯で大山山頂から裏側に派生する【北尾根】の稜線を眺めることができる。
898mピーク手前から尾根が痩せてきた。梅ノ木尾根への入り口はロープでふさがれていた。そこから入り込み、日向薬師へ抜けるルートがあることを知る者は少ないだろう。
細い尾根は人の気配が薄く新緑が眩しい。此処から唐沢峠までが不動尻コースのハイライトである。
「玄人好みの山道に入りました」私が案内すると、
「プロの道ですね」レスポンス良く返ってきた。
期待していたミツバツツジの花は全く見られなかった。以前5月上旬に歩いた際は、この辺りにミツバツツジの蕾が点在していた記憶がある。時期が早すぎたのか遅すぎたのか私には判断できなかった。 本来、唐沢峠から三峰山一帯はミツバツツジが多い場所である。


【唐沢峠】は小広い鞍部で、東屋のある休憩場所。私はかつて、此処から唐沢源流に降り、唐沢川を林道まで沢下りしたことがある。沢へ降りるルートは閉鎖されているが、その時は斜面を適当に降りてしまったのだった。 私にとって唐沢峠は懐かしい場所である。
唐沢峠から先は、私の古い記憶によると三峰側の山腹を巻くイメージをしていたが(地形図にもそう記されている)、そちら側の踏み跡は薄く、道は三峰山へ直進する方向に登り返し、最初のピークから左へ折れて不動尻へ下るルートを取っていた。 予期していない、つらい登り返しである。
その後道は単調な植林帯をジグザグと急降下していく。沢音が聞こえ出してからも結構長い。バスでヤビツ峠まで稼いだ高度差を、自力で下らなければならず、下りが長い当然の理屈である。三峰からの登山道と合流すると、やれやれ不動尻は近い。


【不動尻】、かつてはバンガローが設置された県立のキャンプ場で、管理棟やトイレの設備もあった場所である。今はキャンプ施設は撤去され、更地となっている。
すぐ脇には谷太郎川(ヤタロウ)の源流が流れ、渓流沿いに煤ケ谷へ抜けるハイキングコースが開かれている。
不動尻からは二の足林道と呼ばれる舗装された車道が通じていて、広沢寺入り口バス停までおよそ1時間の長い車道歩きとなる。
途中の山ノ神隧道は内部に照明がなく、心霊スポットとして噂された時期もあったようだが、直線約200mのトンネルで、日中は出口が見えているので、ライトなしでも特に不安はない。 我々も無事に通過したのだが、隧道内部は冷たい風が強く吹き抜けて、不気味な気がしないでもなかった。
車止めのゲートを潜ると、スピーカーから自動的に大音量でゴミの不法投棄取り締まりの警告が流れ、ビックリさせられた。
そこから少し下ると名水の汲み場があるのだが、目立たない場所なので知らずに通り過ぎてしまうハイカーが多いことだろう。
里山をブラブラと歩いて行く。山では見ることができなかった平地のツツジが所々で咲いていた。広沢寺温泉の一軒宿“玉翠楼”を通り過ぎ、左折して枝道に入る。 細い道だが、この枝道に一日に数本バスが通う。本数の多い広沢寺温泉入口バス停へはこちらからが近い。下調べなくしてはそのまま本通りを直進してしまうことは間違いない。
バス停に着く直前に、数分遅れでやってきた本厚木行きバスのドライバーがさかんに急ぐよう我々に合図している。一刻も早くビールにありつきたい我々は、あわててバスに飛び乗った。


2010/05/30 掲載

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