HOME 海抜2700mの畳平までバスが通い、日本の3000m峰のなかで最も楽に山頂に立てる山「乗鞍岳」 乗鞍スカイラインからの車窓も素晴らしく、畳平周辺の散策だけならば軽装備でも問題ないので、観光客も大挙しての大賑わいです。週末や旧盆にはバスの乗り残しがでることでしょう。 気温は畳平で10~12度、山頂では10度を切り、35度の下界とは別世界、防寒着姿の者もおります。途中の大雪渓ではスキーヤーが点々と遊んでおりました。 学校集団登山が盛んな山のようで、何組もの中学生が大勢登っておりました。 その日は新平湯温泉に泊まり、少量とは云え飛騨牛を賞味し、飛騨の銘酒【鬼殺し】の冷酒で仕上げました。 コース&タイム; ほおのき平駐車場9:25=シャトルバス=10:10畳平10:20~11:00肩の小屋11:10~12:00山頂 山頂(昼食)12:30~13:00肩の小屋13:10~お花畑散策(30分)~14:10畳平14:50=シャトルバス=15:35駐車場 宿泊先;新平湯温泉田島館 乗鞍岳は北アルプスの南部にあって、剣ヶ峰を主峰とし、朝日岳・摩利支天岳・富士見岳・屏風岳など23峰と云われる総称で、特に畳平周囲には2800~3000mの高峰が連なっている。 山域は岐阜県と長野県にまたがっており、長野県側のふもとには乗鞍高原が広がっている。剣ヶ峰三角点は微妙ながら岐阜県側に位置しているようだ。 乗鞍畳平へ向かうシャトルバスは、平湯方面から乗鞍スカイラインを経由する経路と乗鞍高原方面からのエコーラインを経由するものと2系統があって、 我々は宿泊場所への移動を考慮し、ほおの木平駐車場からスカイライン経由のバスを利用した。 広い駐車場は無料だが往復2200円のバス料金は駐車代込みと云えなくもない。 ほおの木平の標高は1240m、畳平までの高低差1460mをバスで稼ぎ、足で稼ぐ高低差は僅かに320mの楽ちん登山である。 今回メンバーは山温会でお馴染みの、sigeさん・kennzouさん・私の3人である。歩行時間が短く、温泉宴会付きのsigeさん好みのプランとなった。kennzouさんとは昨夏、唐松~五竜縦走に挑んだ仲である。 気温はほおの木平で24度、山頂は15度前後を予想したのだが、現地情報板には畳平の気温10度とあってびっくりした。そして視界不良と表示されていた。此処では青空が覗いているというのに。 乗鞍岳登山の価値は天候によって天と地ほどの落差となる。 気落ちしながらバスを待っていると、山から下りて折り返すバスのドライバーが、気温12度、視界良好との最新情報と差し替えた。 途端に我々乗鞍登山の価値も地から天に差し替えられて、ラッキーな気分が充満した。 シャトルバスはこの時期濃飛バスのドル箱路線のようで、職員一様に愛想がいい。 観光バスタイプの座り心地が良い車両が用いられ、山岳道路走行の為に全員着席で運行されている。盛夏の時期には30分毎にバスが運行されているが、それでも早めに並ばないと乗り切れない場合がありそうである。 我々は中央自動車道八王子I.Cから松本I.Cまでsigeさんご自慢の愛車レガシー3L四WDの高速性能を如何なく発揮して早めに到着したので、予定していたバスより2本早いバスに乗車でき、気持ち・時間ともに余裕が大きい。 バスは高原道路をゆったりと登って行く。景色も雄大だが、森林限界に至る植栽の変化を観察できるのが珍しい。 畳平には10:00過ぎに着いた。既に拾数台のツアーバスが駐車していて、準備中の団体もいた。周囲には土産物店・レストラン・簡易郵便局が並び、神社もある。富士スバルラインの5合目とよく似た雰囲気である。 それほど広い駐車スペースがあるわけではないので、マイカー規制される以前は大混雑だったことだろう。 登山道は中腹肩の小屋までコロナ観測所・宇宙線観測所・山小屋への荷揚げ用の未舗装ながら整地された車道で、鶴ヶ池経由で車道を進むこともできるが、我々は一旦お花畑に降りてから登り返し、車道と合流するルートを取った。 緩い登りだが少し急ぐと息が切れる。やはり相当空気が薄いのだった。時間に余裕のある我々はのんびり歩くことにした。 コロナ観測所への分岐を過ぎて肩の小屋手前の大雪渓では、スキーヤーやボーダーが下の方で遊んでいて上まで登ってくる者は見かけない。 それでも雪渓最上部までスキーを担いだ数人が辿りついていたので腕前を見てやろうと暫く眺めていたのだが一向に滑り降りる気配がない。 「苦労して上がってきたので簡単には降りないのだろう」と、スキーが得意なsigeさんの談である。登るのに一時間、滑り下りるのは一分もかからないとの由、 彼はゴンドラ・リフトがない場所では金輪際スキーはやらないとのことだった。 肩の小屋の周囲は広い。清掃が行きとどいたチップ制の公衆トイレがある。小屋前の広場で中学生らしき団体が食事休憩していた。山頂周辺は狭いようなので、団体客は早めに此処で昼食を取るのが望ましのだ。 車道はここが終点で、この先傾斜が増しようやく3000m峰の登山道らしくなった。 道は岩屑混ざりの火山礫で、下ってくる登山者がズルッとよく転ぶ。道幅は広いが登山者も多く、特に団体を追い越したりすれ違ったりに難儀し、一定のペースを保つのが案外難しい。 気温が低いこともあって汗をかく間もなく一踏ん張りで鞍部に立つと、小さな社が建つ剣ヶ峰山頂は目の前で、短い詰めの部分は上り下りに分かれ一方通行になっていた。 山頂絶頂点は社が占めていて、その周りをグルリと廻って360度の大展望を得る。残念なことに槍穂高と御嶽山は雲の中だった。 その小さな社は乗鞍本宮の奥宮で、記念品などを販売していた。 我々は風裏となる北斜面を一段降りて昼食休憩とした。風をもろに受けると上に一枚着込んでもなお寒いのだった。眼下には乗鞍高原が広がる。だが彼方麓まで見渡せるほど視界は良くない。 それでも、ほおの木平到着時に表示されていた視界不良を思えば上出来であった。 下山は早い。グングンと下る。道がすいていれば登りの半分もかからないだろう。時間が早すぎるので、たくさんの高山植物が咲くお花畑の木道をゆっくり一周してバス乗り場へ向かった。 最初のバスは既に満席で、次発の優先乗車確認印を乗車券に押してもらって、周辺でくつろいだ。 寝静まったかのような満席の車内で一人起きていた私は、登山中は雲の中だった槍穂が一瞬姿を現してくれたのを車窓から見逃さなかった。 |