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雨 の 仏果山~宮ヶ瀬ダム 2010.12.14


砕石場上部から大山三峰方面の眺め


コース&タイム;
本厚木8:40=神奈中バス=9:25土山峠
土山峠登山口9:30~主稜線登山道合流(仏果山中間点)10:20~11:10仏果山747m(軽食休憩)
仏果山11:40~12:10高取山12:20~13:10宮ヶ瀬ダム湖(展望台見学等)
(ダムエレベータで底部へ)13:30~13:50愛川大橋
愛川大橋バス停14:21=神奈中バス=15:05本厚木
所要時間;4時間20分、歩行時間;3時間20分、

NHK気象予報士の「雨は朝まで,日中は晴れ間も」との言を信じて出かけましたが、その日はとうとう山を降りるまで終始降られ続けてしまいました。
人気の高いコースとは云え、平日の冷たい雨中にわざわざ山歩きなどする者は珍しい存在でしょうに、他のグループ一組と遭遇いたしました。いるんですね、珍しい人は。
雨の中での休憩は不自由なので、山中は黙々と一人歩き続けることになり、云ってみれば修行のようなもので、たまには悪くないですね。緩んだ精神が鍛え直される気がいたしました。
時折視界が開け、浮雲が漂う峰々はとても低山とは思えない幻想的な情景で、晴天時には味わうことのできない山の景色でありました。
下山地は宮ヶ瀬ダムの堰堤上部、私は初めて訪れましたが、コンクリート堤体の巨大さには驚きました。躯体内部を貫く無料エレベーターで120mほどの高低差を一気に稼いでしまいました。
なお、本コースは短めな低山のコースですが、一部厳しいアップダウンや切り立ったヤセ尾根の通過があり、侮ることはできません。 またヤマヒルの多い所のようですが私は初夏を含め3回この辺を歩きましたが未だに遭遇しておりません。



登山口の土山峠は、仏果山主稜線から派生する支尾根と辺室山へ続く尾根との鞍部で辺室山への登山口でもある。峠の先は平坦となって宮ヶ瀬湖畔となり、今では峠らしさが薄れているが、 かつては煤ヶ谷からグングンと高度を上げた県道は、土山峠を頂点に中津渓谷上流川底へと急下降していき、土山峠は典型的な峠の形状だった。 私が中高生の当時、キャンプや釣で何度か通った山深い懐かしのオンボロバス路線だった。
ダム本体工事が進むとともに、宮ヶ瀬ダム湖周囲一帯の道路はダム堤体レベルより上部に付け替えられ、旧道は水没した。
その土山峠まで小田急本厚木駅を始発とする宮ヶ瀬行き神奈中バスでおよそ40分ほどの道程で、次のバス停“仏果山登山口”から登ると仏果山への最短となる。バスは1時間毎に運行されている。
宮ヶ瀬行きバスは駅前の大通りを横断した5番乗り場から出る。
いい香りがバス乗り場に漂い、周囲を見回すと近くに立ち食いソバ屋がある。たちまち空腹を覚えた私は15分ほどの待ち時間があるのを幸いに暖簾を潜った。
注文はカケソバに決めていたが一応メニューを見るとシロコロソバなるものがある。さすがにB級グルメの街、などと感心しながらも朝はカケソバがいい。 コシが強くなかなか旨いソバで、その後雨で食事休憩を満足に取れなかったことを思うと、ここで補給しておいてほんとによかった。
蕎麦の他に酒やツマミのメニューが豊富でイス席も多く蕎麦屋というよりは一杯飲み屋だった。忍庭(シノブテイ)という店である。

バスが走り始めて直ぐ窓に雨が当たる。
満席の乗客は飯山までに大方降りてしまい、土山峠で最後の乗客一人を降ろし、空のバスは走り去った。
雨中での身支度は難儀なもので、私はバスの中でレインウエアを着用し傘も取り出しておいた。案の定バスを降りると本降りで逃れる場所は付近に見当たらなかった。
辺室山への登山口はバス停に近接し、登山届のポストが設置されている。
仏果山登山口は本厚木方向へ100mほど戻り、登り車線の石積擁壁裏側にあった。分かりにくい場所だが標識があるので迷うことはない。
天気は短時間で回復すると見込んでいた私は登山を中止する考えを持たなかったが、予定を短縮して半原へ下山することは念頭において出発した。
いきなり急登である。たちまち体が温かくなった。透湿性の雨着とは云え、やはり蒸れるのである。
急登は長くは続かず緩やかな尾根の道に変わる。
主稜線と合流する間は私にとって初めてのルートで、手持ちの丹沢登山地図には破線ですら記されていないのだが、それなりに手入れされた道だった。 昨日からの雨で道が悪いのは覚悟していたのだが落ち葉の道はぬかるんではいない。 葉を落とした梢の間から宮ヶ瀬湖が望め、なかなかいい雰囲気の道である。だが、心細くなるほどの静けさだった。

主稜線登山道との合流点は土山峠~仏果山のちょうど中間点にあたり、それぞれ1.6kmの標識があってベンチが置かれた休憩ポイントだが、今日は濡れたベンチで休憩する気は起きない。
この先主稜線登山道は関東ふれあいの道に指定されていて昨年の12月に私は歩いている。山頂が近づくと尾根が切り立ってくるので、折りたたみ傘をザックに仕舞い慎重を期すこととした。
砕石場の上部はスパッと切れ落ちていて、覗きこまない方が無難である。雨が小降りとなってガスが切れ山々の大展望が広がったが、足元が悪い場所なので景色に気を取られていると危ない。
ロープの岩場を通過すると仏果山山頂である。
人の気配のない山頂、ガスが切れているので10mほどもある展望塔へ上がってみた。平地方面は霞んでいたものの、煤ヶ谷・宮ヶ瀬奥の山々が浮雲を従えて薄暗く聳える情景はアルプス高峰群を見ているようで、雨の山は満更でもない。
眺めを堪能し、展望塔の階段踊り場を屋根代わりにようやく一息ついた。

高取山から宮ヶ瀬ダムへ向かう寂しい寂しい道


高取山へは一旦山腹を急降下して穏やかな稜線の道となる。仏果山登山口への分岐点は峠状の鞍部で“宮ヶ瀬越”と呼ばれ、そこを過ぎて少しの登りで高取山 706m山頂に到着した。 こちらの山頂にも展望塔が設置されているが、当日はガスに覆われて視界がない。 晴れていれば仏果山展望塔と同様な好眺望を得る。
ところで、高取山は丹沢山域に3峰あり紛らわしいので、本峰を宮ヶ瀬高取山と呼び他と区別することがある。他の2峰は伊勢原市の大山南稜のそれと厚木市飯山のそれで、後者は本峰からの縦走が可能である。
高取山から宮ヶ瀬ダムへ下る道はダム完成後に整備された道で、手持ちの古い丹沢登山地図には破線ですら記されていないのが、今では1/25000地形図に掲載されている。
この道は出足の山頂直下がヤセた岩場で、最後のダム湖に下る部分は転げ落ちそうな急こう配の難所。中間部は穏やな尾根道で、全体的にはよく整備されているのだが人通りは薄いようで、道は落ち葉で覆われていて判然としない場所が少なからずあった。
また、所々で開ける場所があるのだが、当日はガスの中で眺めは台無しだった。
降り立った宮ヶ瀬湖畔からダム本体は目と鼻の先で、堤体中ほどに展望台が、その手前に堤体内部を貫くエレベーター昇降口があって、ダム基盤部との高低差120mを一気に無料で運んでくれた。 その他にもインクラインと呼ばれるエレベータとケーブルカーを足して2で割ったような面白そうな乗り物があり、こちらは有料だが運休中だった。残念!
宮ヶ瀬ダムは首都圏最大級で2000年(平成12年)に完成。重力式コンクリートダムで総貯水容量約2億トン,堤高156.0m,堤体容積約2百万立米という、見当のつかない大きさである。 本体全容を基底部から眺めるのは不可能で、数十メートル以上も離れてようやく全体が見渡せる巨大さだった。
最寄りのバス停“愛川大橋”へは20分ほど川沿いに下る。旧中津渓谷石小屋にも小さな堰堤(石小屋副ダム)が出来ていて、放流調節をしている。
バス停は橋の中ほどにあり40分毎の運行で、さらに半原まで足を延ばすと20分毎に便がある。

重力式コンクリートダム、右下の人と比べてダムの巨大さがわかる

2011/01/01 掲載

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