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草津白根山 2012.07.09


群生している可憐なコマクサ

本白根山ハイキングと草津温泉街散策&西ノ河原露天風呂(有名な千人風呂)入浴がセットになった、横浜出発のバスツアーで行ってきました。 当日と前日、二日限りの催行で、地元の振舞いと抽選会が催せられ、クラブツーリズムイベント企画の一環でして、前日は日曜日とあって、全国各地からバス24台が集結し、雨の中大混乱だったようです。
本日はバス8台が時間差で到着、しかし天気が回復したこともあって、ツアー客以外のハイカーも多数で、昨日の大混乱ほどではないにしろ、遊歩道・登山道は所々で渋滞しておりました。
ツアーで指定されたコースからはずれて最高点2150mまで足を延ばした私は、追い越しが思うように出来ないので時間を取り戻すのにヤキモキいたしました。
大群生のコマクサはちょうど見頃を迎えていて、大変な人気も頷ける素晴らしいものでした。
ハイキングの後は、旅番組などでお馴染みの草津温泉西ノ河原露天風呂&草津温泉街散策タイムです。千人風呂と云われる露天風呂は、想像していた以上に広い、でも一度に千人は無理でしょうね。
その後湯畑まで散策し、このまま帰るのはつまらない“草津好いとこ”で泊まりたくなりました。
帰路のバスは寝静まるかと思いきや、女どものおしゃべりが延々と続き、私はイヤホーンで音楽を聴きながら持参した日本酒をチビリチビリと飲み続けました。

行 程;
横浜7:20=関越自動車道=中里P.A9:50=渋川I.C=草津道の駅=白根山ゴンドラ山頂駅12:20=リフト
リフト終点12:30~最高点(2150m)13:10~展望台13:30~山頂駅14:10~14:30レストハウス
レストハウス15:00=天狗山P15:30~西ノ河原露天風入浴~温泉街散策~17:20天狗山P
天狗山P17:30=上州物産館(伊香保付近)18:50=伊香保I.C=三好P.A20:10=21:10横浜西口
※ レストハウスと山頂駅間は無料のシャトルバスが20分間隔で運行され、歩いても下り15分、上り20分程です。



草津白根山とは、志賀高原側の湯釜がある白根山、草津側の本白根山(モトシラネサン)、そして二山の間に聳える逢ノ峰を含む2000m級峰々を一連の白根火山として捉え、総称しての呼び名である。 深田久弥の百名山でも湯釜の白根山と本白根山のどちらか一方を百名山として選択しているわけではない。
草津白根山を登山目的として捉えた場合、湯釜の白根山は現在火山性有毒ガスの危険により立ち入りが制限されていることから、いきおい本白根山を指すことになる。
ところで本白根山の山頂はどこか? の答えが案外難しい。 地形図上の最高点は2171m、だがヤブが深くてこのピークへ通じる道がない。三角点は2165m、ここもハイマツ帯の中で道がない。 結局ハイカーが到達できる最高点は万座方面へ通じる登山道のピーク2150m地点で、白根山の山頂標識もそこに設置されていた。便宜上この場所を山頂とすることに私は異論がない。 本ツアーでは2140mの本白根山展望台を山頂としていたが、ポピュラーな周回コースの最高点であり、顕著なピークのここも捨てがたい。はてさて?

7:20横浜駅西口をバスは定刻に出発した。車内は満席で例外なくシニア世代、卒業して半世紀を経た同窓会のバス旅行のようなものである。 6割が女だ。女は長生きである。女は初対面同士でもすぐにおしゃべりが始まる。おしゃべりは寿命を延ばすようだ。
わが隣人は70代半ばの老人、こちらも挨拶を交わしてポツリポツリと会話す。お互い煩わしさがない距離を保つ。隣人は私を同世代の孤独な老人と踏んだようだ。 見込み違いも甚だしい。山の経験が薄いようなので、山での心得などを少しレクチャーしておいた。
バスガイドは同乗しないので中年の女性添乗員が時折案内する。だが、関東平野の真っただ中、関越自動車道の車窓には話すネタがない。 右は新幹線だの、澄んだ日には秩父の山が見えるハズだのとくだらない。先ごろデズニーランド行きのツアーバスが大事故を起こした関越自動車道、事故現場は特定できないまま過ぎてしまった。
上里P.Aで休憩し、弁当を積み込み、すぐに配られた。まだ10時前だ。だが早くも食べ出す人々がいた。
渋川伊香保I.Cから一般道に出る。

道は17号線から分かれ、吾妻川沿いに上流へ向かう。この道はロマンティック街道と名づけられ、観光客を引き付ける算段のようだ。車窓はようやくローカル色が濃くなってきた。
この上流に八ッ場ダム(やんばダム)建設地があることを隣人に知らせたが、本気にしないようだった。 建設現場通過の際、添乗員から説明があって、“アッ本当だったんだ”と感心されてしまった。
ダム周辺の付け替え道路は異様に立派な構造物で、ダムの是非は兎も角として、建設費が底なしに膨らむ仕組みが周囲を一瞥しただけで分かってしまう。
白根山登山口着は昼を少し過ぎるとのことで弁当を食べた。オギノヤの釜めし風で美味しいものだった。
“草津道の駅”が最後の休憩場所、温泉街はたちまち通り過ぎ雄大な山岳展望が始まる。
バスはゴンドラ山頂駅への枝道を見過ごして志賀高原方面へと進んでしまった。私はすぐに変だなと気が付いたが、ドライバー・添乗員もすぐに気づいたようだ(ドライバーは二人乗務していた)。 だがバスは簡単にはUターン出来ないのだった。
“お客様はラッキーでしたね!長野県まで行ってきたのですから”と添乗員が機転を利かした。ロスタイムは15分程度である。

雄大な本白根中央火口原の遊歩道

登山口からはスキーリフトを使う。これにより高低差70~80mを稼ぐことができ、年配者でも容易にコマクサ群生地を往復することができる。 バスを降りた50名近い一団がリフトを利用することによって分散されるので、一般ハイカーへの迷惑が軽減される意味もあるだろう。 その後ツアーご一行様はレストハウスの集合時間まで約3時間、所定のコースを自由散策である。歩くのが苦手な客はコマクサを見て引き返すのも自由だ。
リフトに私は隣人の相棒と座った。二人合わせて約140歳、たいしたロマンスシートだな!
降りる間際に内側に座った相棒に、着地したらすぐに左前方に逃げるようにアドバイスし、その意味はピンと察したようで安心していたところ、なんと右側に逃げてしまいリフトに巻き込まれそうになった。 あわてた私は飛んできた係員とともに“コッチ!コッチ!”と大声を出して引き戻し、事なきを得たのだった。
下からの登山道と合流すると早くも渋滞が始まった。道は狭い木道で追い越しが不自由なのだ。周囲はダケカンバを主とする灌木林で、私は相棒にダケカンバを教えたのだが、反応を示さない。 テシャバリは避けたほうがよさそうだ。ウグイスが澄んだ声で盛んに鳴いている。彼の後方を暫く歩くと相棒の動きは案外軽快なので、そのタイミングで後方に離れた。 私は極められたコースを外して最高点を踏む目論見があったので、別行動を取らざるを得なかったのだ。
周囲では、“ワー!コマクサがたくさん咲いている”との歓声が揚がる。それは可憐なピンクの花には違いないが、イワカガミだった。私はあえて黙っていた。

灌木林を抜けると一気に広大な景色が広がり、眼下には中央火口原に遊歩道が伸びている。一帯は火山礫にハイマツが植生していて、植生の薄い火山礫の裸地には、いたる所に無数のコマクサが咲き誇っていた。 北アルプス高山の岩陰にひっそりと咲くコマクサしか知らない私にとって驚きの景色だった。地元で大切に守り・育て・増やしてきたのだろうか。
遊歩道は一旦火口原の底へ下りる。最低鞍部にカモシカが1頭佇んでいた。
周回コースから最高点(山頂)へ向かう分岐にはツーリズムの係員が待機していたので、コースを外すことの了解を得る。 ツアー客はバッジを付けているのですぐ分かるのだ。道間違いを防ぐ為の待機で、承知の上でコースを外す客には無理に止めないようだった。
登山道は一旦大きく東に迂回しながら緩やかに南側の山稜に乗って西へ進む。こちら側もコマクサが群生している。一般客とは結構すれ違うがバッジを付けたツアー客はいなかった。
分岐から15分ほどで山頂に着いた。しばし待つとガスが切れて志賀高原側の横手山や笠岳がはっきり姿を現した。浅間山が姿を現さなかったのは残念だった。

30分ほど時間を余計に使ったが集合時間が気になるほど遅れてはいない。だが周回コースに戻ると、混雑で思うように進めないのだった。 人気コースでは自分の実力が発揮できないことを念頭に置いおくべきである。
展望台に登る。ここもすぐれた眺望だが、山頂の方がやはり展望が広い。山頂を踏んだ甲斐があったようだ。鏡池は上から眺めるだけにした。降り道の渋滞が予想されたからだ。 樹林に囲まれ静かな雰囲気の小さな池である。
下りは樹林の中の道、リフトで上がった分も降りなければならないので、思いのほか長く感じた。
途中に長い木道の桟橋があり、傾斜があって滑りやすい。滑ると転落する。私はトレッキンシューズで問題なかったが、フリクションの劣るウォーキングシューズのハイカーは恐々と通過していた。
私は結局時間を余して山頂駅へ戻ってきたので、シャトルバスは利用しないで車道をブラブラと下って、弓池を見て、レストハウスへ戻った。 レストハウスでは先に戻っていた相棒が出迎えてくれて、天然水と野沢菜のお焼きを差し入れてくれた。

弓池越に眺める白根山と湯釜の稜線
2012/07/16 記

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