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日向薬師~鐘ヶ嶽 2012.01.13

大山北東部の山域は観光登山で大賑わいの表側とは別世界、それでも近年北尾根や梅ノ木尾根は大分歩かれている様子だが、訪れるハイカーはまだまだ少なく、一般には知られていない場所も残されている。
今回辿ったコースもそんな登山地図には記されていないルートが含まれ、地形が複雑で急峻な所もあって危険な香りが立ち込めていた。

コース&タイム;日向薬師9:00~(道を間違え15分ロスタイム)~10:30大沢分岐10:40~(東屋)~674m峰11:15
~(見晴らし台A、見晴らし台B)~山神隧道分岐11:45~12:05鐘ヶ嶽12:20~七沢神社~13:00広沢寺温泉入口
所要時間;4時間(休憩時間25分含む)





日向薬師仁王門




梅ノ木尾根から大山を望む




大沢分岐点、背後に三ツ峰山




アップダウンが続く梅ノ木尾根、手前に迷い込んだ小尾根




山神隧道分岐手前から鐘ヶ嶽を望む




鐘ヶ嶽山頂




鐘ヶ嶽七沢神社



2012年初歩きは大山北東の山域を選びました。
いろいろ情報を下さっている(仮称)○○オヤジ様の勧めがあり、自分にとつても未知の領域が含まれていることに縁ったのです。 ここで云う大山北東山域とは、北尾根と日向川に挟まれた山域を指す、と自分勝手に決めております。
この山域の公式ハイキングコースとしては唯一不動尻コースが中央を貫いているだけで、ほとんどはガイドブックに掲載されていないコースです。
さて、今回登山起点の日向薬師は日本三薬師の一つとされ(自薦・他薦、全国に数多くあり)、1300年もの歴史を持つ古刹で、現在は高野山真言宗の宝城坊(ほうじょうぼう)が寺籍を継いでいる。
昨年1月からの大改修工事は7年かかる見込みで(2018年まで)、かやぶき屋根の厳かな本殿の参拝は当分かなわない。
境内の裏手には標高404mの日向山があり、かつて山頂付近に薬師奥の院が置かれていた。 また、日向山一帯には七沢や広沢寺へ下る手軽なハイキングコースが通じていて、大山梅ノ木尾根コースも元々はそのうちの1コースで、日向山から浄発願寺奥ノ院へ通じていたのだが、 マニアックなハイカーが不動尻コース893P付近まで道を開いて大山への新ルートを築き、日向薬師裏の梅林が登山口となることから梅ノ木尾根と名付けたことがネット上で広まったようだ。 今では山林管理者も梅ノ木尾根の名称を公認し、その標識が設置されるに至った。一方で立ち入り禁止看板も多く見られ、ハイカーに登山道を外さないよう自制を呼びかけている。
浄発願寺奥ノ院分岐から上部は、私が以前に歩いた際はマジックなどで書かれた表示板が随所で見られたが、今は取り払われていて(大沢分岐点にはある)、特に不動尻コースから梅ノ木尾根への取りつき点の目印は全て排除されていて非常に分かりにくい。 梅ノ木尾根上部はハイカーの立ち入りを山の関係者は歓迎していないようだ。

さて、まずは仮本殿の宝物殿に新年のお参りし、裏手の駐車場に出る。その奥が登山口、一段上は小さな梅林で梅ノ木尾根の由来となっている。道は山腹を緩やかに巻き主尾根に乗る。右に行くと日向山である。 私は左に進路を取り梅ノ木尾根稜線に乗った。大沢分岐までおよそ60分と踏んでいたので休まずに先へ進む。
道は明瞭だが歩く人が少ないのだろう、表参道のように岩屑が洗い出されることなく、土の道で大変歩きやすい。弁天の森への分岐を見送り、稜線は概ね緩やかにアップダウンを繰り返し高度を上げていった。
道の左は植林だが右側は広葉樹林で、葉が落ちているこの季節は視界が効き、大沢川左岸の400~500mの山波が見渡せる。目指す“鐘ヶ嶽”はその山波の奥で姿を見せていない。
537P(peak)を通過し浄発願寺奥ノ院分岐に出た。指導標識は浄発願寺奥ノ院方面だけを示し、大山方向を指す標識はない。かまわず尾根伝いに直進すると傾斜が増し、登り切った前方の支尾根が大沢川源頭を跨いで674Pへ向かっているように私には見えた。
その分岐に到達すると周囲の木にピンクのテープがたくさん巻かれていたので、間違いないと合点した私は急な小尾根を谷側に降りてしまった。ところが傾斜は切り立ち、踏み跡が無くなってしまい、間違いを察した私はシマッタと引き返す。 とは云うものの、道のない急斜面を登るのに難儀して、ここで15分もロスしてしまった。

大沢分岐はヤセた尾根を通過した直後のピークだった。其処だけには目立つ標識が立っていた。目の前に三ツ峰山が大きい。時間をロスしたが大して遅れている訳でもないので、歩き出して初めての休憩を取り、水分と食べ物を補給した。
主稜線を外れて右に折れ、この先は私の未踏区間である。鹿柵沿いに緩く下ると僅かで崖に行く手を阻まれ、鹿柵は大沢源頭に向かって落ち込んでいく。 困惑した私は周囲を観察すると、鹿柵方向は×→、左側崖のヤセた小尾根方向に←○としたメモのような貼り付けを見つけて、正しい方向へ無事に導かれた。○○オヤジさまの作らしい。ヤセ尾根方向が本線とはとても思えなかったので、目印がないと道を間違え谷筋に引かれるところだった。 もっとも逆コースだと迷うような場所ではない。
ストックを仕舞い岩場の要領で三点確保しながら下った先の鞍部には立派な東屋が建てられていた。 バリエーションコースには不釣り合いな気がしたが、唐沢峠にも同じような東屋があったことを思い出し、其処は県営不動尻キャンプ場利用者のハイキング休憩スポットだったろうことに思いが至った。かつて賑わったそのキャンプ場も今はない。

朽ち果てたような鹿柵に沿って登り返すと再び稜線に乗る。大沢川左岸の山波である。この間は辿ってきた稜線の景色が良い。稜線上の674P、見晴らし台A,見晴らし台Bとヤセ尾根の小ピークが続く。“見晴らし台”は地図上にない名称で、ようやく私は位置関係を把握することが出来た。 地名ほどには展望は開けない場所である。
見晴らし台Bは登山道の交差点となっていて、鐘ヶ嶽へは左折する。朽ちた鹿柵沿いに急降下するのだが、危なっかしい道である。逆コースの方が転落・滑落の危険は和らぎそうだ。
降り立った峠状の鞍部は山神隧道への分岐点で、下の林道まで僅かな距離。鐘ヶ嶽方向と広沢寺方向を指す指導標識はあるが、今降りてきた方向を指す標識はなかった。大山山頂を経て鐘ヶ嶽に立ち寄る場合は、本コースのように尾根伝いにアップダウンを繰り返すよりも素直に不動尻に降り、林道を経由して山神隧道出口から登り返した方が時間的にも体力的にもよほど優れているようだ。 もっとも満足の度合いは別である。
この先鐘ヶ嶽の登山道は良く整備されていて、私は指導標識のコースタイムを大幅に短縮して広沢寺(コウタクジ)温泉入口バス停へ下った。 山容が釣鐘状の鐘ヶ嶽は麓七沢の氏神様で、下山路の表参道に積もった落ち葉は丁寧に掃き清められていた。

2012.01.18 記

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