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新緑の 檜洞丸  1601m  2009/06/02


緑あふれる檜洞丸山頂の一角


御殿場線谷峨駅から乗った朝一番の西丹沢行き富士急バスは平日にかかわらず登山客で超満員、西丹沢自然教室の駐車場は既に満車で入りきれないたくさんの車が路上にはみ出しておりました。
檜洞丸(ヒノキボラマル)は、つつじの時期は大変な人気であります。残念ながら白ヤシオはほとんど散っておりました。ミツバツツジはかろうじて山頂付近で花が残っていました。
ポピュラーなつつじ新道で山頂へ。そして山頂から犬越路に降りるコースは私が若い頃逆コースで登って以来数拾年ぶりとなります。展望が見事で林相が美しいコース、しかしアップダウンが多い嶮路でいささか疲れました。

コース&タイム;
西丹沢自然教室8:50~9:35ゴーラ沢出合い9:40~10:25展望地10:35~11:30石棚分岐11:35~11:50山頂
山頂12:15~14:20犬越路14:35~用木沢出合い15:35~16:00西丹沢自然教室
所要時間;7時間10分、歩行時間;6時間10分



丹沢山地としては貴重な1600m級の独立峰で、山塊奥深くに孤立している檜洞丸。久しく秘峰と云われていた。だが、今では四方から登山道が開かれている。
一般的登山コースとしては、箒沢から石棚経由, ユーシンからトウガク経由, 丹沢主峰の蛭ヶ岳から(主稜縦走コース), 用木沢または日蔭沢橋から犬越路経由, 日蔭沢橋からヤタ尾根経由などがある。
東丹沢と西丹沢を唯一結ぶ大切なルート、蛭ヶ岳~檜洞丸間が私は未踏である。この間は厳しいアップダウンがあって敬遠し続けているからである。いささかなさけない自覚は持っております。
このほか、檜洞や小川谷などの沢ルート、神ノ川源流から山腹を詰め上がるバリェーションルートなどバラエティーに富んだルートがある。
山頂から東へ少し下ると、週末営業の青ヶ岳山荘がある。青ヶ岳とは道志側の別名だが、今では檜洞丸が普及し、この山荘だけが昔の名を残している。青ヶ岳山荘と云う名にちなんでであろう、小屋は青ペンキで塗られている。トイレを利用できる貴重な場所でもある(有料)。
ところでこの山域は5月中旬から6月初旬のつつじが見ごろを迎える時期には大変な賑わいとなる。山頂付近に群生するシロヤシオがお目当てである。 シロヤシオ(ゴヨウツツジ)が敬宮愛子内親王のお印とされて以来大ブレイクしたようだ。他に丹沢では丹沢三峰山上部にシロヤシオが多いのだが、こちらはあまり知られていないようだ。
大多数のハイカーは最も短時間で楽な【つつじ新道】を歩く。この時期の週末ともなると、鎖場や撮影ポイントなど其処かしこで渋滞すると云う。
檜洞丸登山コースとしていまや最もポピュラーなこの【つつじ新道】、開設は昭和41年、新道どころかクラシカル登山道とも云える古いコースだが、昭和47年の大水害で荒れて一般的には利用されなくなった期間が暫らくあった。 それ故か未だに【つつじ新道】と呼ばれ定着している。


バスは喘ぎながら急坂を上り、丹沢湖沿いに目的地とは逆方向へ走り玄倉へ寄り道する。そこには学童5~6人が待っていた。乗り切れるか心配したが、ドライバーは降り口の前部ドアーを開けて無事に収容した。 車内は身動きできない状態で、途中停留所で降りる乗客は前方出口へ移動することが出来ない。その為、前方に立っている乗客は一斉にタラップを降りて通路を空けなければならなかった。 バス後方の乗客が途中下車する場合は、後部ドアーを開けバスの外を移動して前部出口から再乗車し料金を払う始末。降車客がいる度に時間を喰い、結局バスは20分遅れて終点の西丹沢自然教室に着いた。 降り立つと自然教室の職員が待ち構えて登山届用紙を配っていた。私は丹沢で初めて登山届を出した。
単独の自分は仕度も早く、混みあうトイレを尻目に素早く歩きだした。バスを降りたのが最後尾だったのでグズグズして渋滞に巻き込まれるのを嫌い、遅れを少しでも取り戻したいからだ。私は帰りの16:20バス時刻に間に合うよう行動時間が制約されている。
前を数組がパラパラと歩いて行く。皆つつじ新道へ向かった。私は昨日までの長雨で流量が多いゴーラ沢出合の渡渉に失敗し片足を濡らしてしまう。イメージしたジャンプに身体が応じきれないのだった。ここから山頂まで2時間、上りの連続となる。
私はつつじ新道を何度か歩いて記憶に残っているので、休憩場所をあらかじめ決めて、自分なりのペースをつかんで快調に登る。だが途中で後続組に幾度も道を譲らなければならなかった。
雨上がりの好天気、展望地では富士山がスッきりと望まれ歓声が上がる。鎖場は鎖に頼らずとも難なく越えた。石棚方面への分岐手前から木製階段が増える。この辺りからシロヤシオの群落が見られる。だが花は大方散っていた。 数人のハイカーは未練がましく僅かに残った花を宝探しのように見つけ出し、カメラを向けていた。
植生保護の木道が現れると山頂は近い。
山頂に転在する数脚のベンチは既に空きがない。私は山頂西端の静かな一角の草むらに腰を下して昼食休憩とした。

犬越路への縦走路、正面に大室山

山頂~犬越路間は今回最も楽しみにした区間である。厳しかった登山道が遠い記憶に残っている。
縦走路に踏み入ると目の前に大展望が広がった。富士山~西丹沢~道志の山々!! 山中湖も視界にある。眼下には満開のミツバツツジの大木が! 期待が報われ、大満足を味わう瞬間。 可憐な山の花々も悪くはないが、私はそれよりもダイナミックな山岳展望に尚いっそう魅かれるのだった。
熊笹ノ峰と大コウゲとの鞍部は峠状の小広場で、ベンチが設置された休憩場所となっている。4~5人のグループが疲れきった表情で休んでいた。犬越路から登ってきたのだろう、難路を物語っているかのようだ。 この鞍部からヤタ尾根を下り神ノ川へ出る間道が分岐している。道志側へ抜けるのには便のいいルートである。
幾つもの頭峰を乗り越えるので、熊笹ノ峰と大コウゲの頂を特定することは難しい。この鞍部を挟んだ前後のピークがそれらに当たるようだ。ここまでは林相が美しい素晴らしい尾根道である。特に新緑のブナがいい。
登り返した大コウゲの先から小コウゲまで一気に高低差250mを急降下する。ヤセ尾根の岩場で、ハシゴや鎖場が続く難所である。展望は素晴らしく大室山が眼前に大きく立ちはだかる、だが景色を楽しむ余裕がない。 鎖場の下りは足元が確認しにくいので、上るよりよほど難しいのだった。かつて私が登った時代には、鎖も梯子もなく、手足をフル稼働させて攀じあがった記憶が蘇ってきた。
檜洞丸の南側または北側遠方の山から山頂~犬越路間の稜線を眺めると、ギザギザと降下していくのが認められる。実際に今そのギザギザを忠実に辿っているのだった。そのボリュームある縦断面の眺めからは想像できないほど横断面はヤセ細っていた。
小コウゲからの急な下りをこなすと道はなだらかになる。だが足元はぬかるんで悪くなった。犬越路トンネルへの分岐を過ぎると目指す峠は近い。途中相前後した中年外人カップルと犬越路ベンチで再会し、お互いの健闘を讃えあった。
遅れを取り戻していた私はここでゆっくり過ごし、下山に取りかかる。出発地の自然教室にはバス時刻に余裕をもって戻ることが出来た。心配していた帰りのバスの混雑だが、増発便が運行されたおかげで新松田までゆっくり座ることができた。

2009.06.10 記

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