HOME 1、初めての手漕ぎボート釣 私が初めて手漕ぎボートで釣をしたのは今から20年ほど前、昭和50年代後半、相模川河口(馬入川)馬入橋付近のハゼ釣であった。茅ヶ崎側の川岸に適当な駐車地を求め、自前のゴムボートで出漁した。 思いがけずに大漁で、それ以降、ボート釣にのめり込んでいった。 この頃の馬入川はまだまだハゼの魚影が濃かったのである。 ゴムボートは、住まい近くの大型量販店で安売りしていた物を衝動的に購入し、手に入れた。 当時、子供がまだ小学生で、海や川辺での子供との遊び道具として役立つとの思いがあったからで、 釣に使用することはその時の念頭には少しもなかった。だからといって私が釣に縁がなかったわけではない。 それどころか私は幼い頃から故郷の小川で小鮒釣に親しみ、その後もずっと釣りを趣味としてきたのである。 当時の住居地は神奈川県の海老名市で、海釣・川釣ともに交通の便に恵まれていたせいでもある。 さて、せっかく購入したゴムボートだが梱包されたまましばらく倉庫で埃にまみれていた。 ある日、釣雑誌に馬入川のハゼ釣が紹介されているのに興味を引かれ、ふとあのゴムボートを思い出したのである。初秋のこれからがハゼ釣に絶好の季節であった。 釣道具は手持ちの物で間に合う。 しかし、それだけでは足りない。ボートが流されては釣にならないので、アンカーとロープが必需品である。 ゴムボート用のアンカーなど市販されているはずもなく(今は市販されている)、仕方ないので取手付きの漬物石に洗濯干し用ロープを10m結んだものを用意した。 ライフジャケットもあれば安心だが、今回は省略した。最悪、川岸まで泳げばよい。 早速次の休日に出かけた。エサはミミズを購入した。 フットポンプを使用して案外容易にボートを膨らませることができた。 釣り場は内水面なので波はなく難なく河岸払いし、順調に漕ぎ進みJR鉄橋上流の適当な場所でアンカリングした。 川幅200m、さらにその両外側に河川敷が広がり、伸び伸びとした場所である。 ロープを伸ばしボートが安定するのを確認して第一投を近くに投げ込んだ。 180cmのキス用船竿に小型スピニングリール、片テン仕掛1本針のシンプルな道具立てである。 選んだポイントは川の中央付近で流れがかなりあるが、漬物石のアンカーが効いている。 水深は3m。この時期のポイントはその後に移動した岸寄りの浅場のほうがよかった。 後日経験を積んで分かったことだが、ゴムボートは流速には強いが風に弱い。 FRP製のボートと異なり、ゴムボートは喫水が極端に浅く底が扁平なので、水流の抵抗を余り受けないのである。 逆に水の抵抗がない分、ゴムボートは風に弱い。少しの風で水面を滑るように流される。強風下に於いては漬物石のアンカーではボートは静止できない。操船も困難となる。 幸い当日は風のない穏やかな好天であったようだ。 さて、2本目の仕掛けの用意ができ、置竿にしていた1本目を上げてみた。 ブルブルと微かな手応えで、一投目からあっけなく中型のハゼが釣れてしまった。 珍しくもないハゼだが、大変可愛く感ぜられ、妙に嬉しくもあった。 ボート釣での初の獲物であった。 この日はその後もポイントを移動しながら間断なく釣れ続け、結局半日で大漁となった。 その晩の釣りたてのハゼ天はことのほか美味であった。 翌週の休日に息子を誘い、再び馬入川のハゼ釣に出かけた。 今度はライフジャケットを1着用意した。 息子の世話で釣に専念というわけにはいかなかったが、二人ともにマズマズの釣果を得て、オカズを確保できた。 帰宅後、ボートはマンションのベランダで洗い干した後に、別棟に割り当てられていた狭い倉庫に保管した。 2、私の手漕ぎボート釣の変遷 馬入川のハゼ釣の釣期は3ケ月で終了する。夏の終わりから晩秋までである。 その後12月に釣行したことがあるが、わずかに形を見ただけであった。 こうなると本格的に海へ漕ぎ出したくなるが、一応二気室ではあるが安物のゴムボートでは少々心もとないので我慢して、しばらく情報の収集に努めた。 その間、FRP製の貸しボートで時々沖に出、ボート釣を実践した。 砂底でキスが、浅場の根周りではアイナメ・カサゴがよく釣れた。 初めて手に入れた本格的フィシングゴムボートは、現在の住まい・大船へ転居してからであった。一戸建のために、気兼ねなくボートの後始末ができるようになったからでもある。アキレス製の2座、一組オール・全底板床式、重量28kgほどの扱いやすい、気に入った物であったが、不注意で底を何回か引きずってしまったために、ボートの底面ゴムを何箇所か損傷させてしまい、修理したものの水漏れが生じ、2年程度で処分した。 購入価格が約50,000円であり、当時の(今も)休日ボートレンタル料金が3,000円であったので、20回使用すれば充分元をとる勘定であり、概ね元は取った。 次に購入したのが東洋ゴム製の二組オール、全底厚板床、ハイバロン二重素材の大型ゴムボートで約80,000円の高価な物。 しかし、このボートは重量が40kgを超えるので、一人での持ち運びが大変で、結局大して使用しないまま、子供やオイっ子たちと海辺で遊んだ際、岩礁帯を漕ぎ回った為に空気室を破損させてしまい、処分した。 一人利用での大型ゴムボートは実用的でないことが判明したので、すぐにアキレスの小型製品を別途購入した。半底板床式1座の製品で、重量24kgと軽いので重宝した。 この頃になると、ポータブルの魚群探知機が実用化されて、市販され始めた。 私も早速手に入れ、手前船長のボート釣では抜群の効果を発揮した。 魚探装備後は釣果が安定し、アジなど深場の根のポイントも確実に狙えるようになった。 魚群探知機の原理は、水中に据えられた発信器から超音波を発射し、海底に反射して戻るまでの時間で海底までの距離を計算し、反射波の強弱を色の濃淡として液晶画面上に表し、底の状態が判断できるようにしたものである。 砂底では淡く、岩礁帯(根)では濃く表示される。海底線が上下に幅広く乱れて表示される場合は海藻が繁茂している場所である。 水中に漂う障害物からの反射波も捉えて画像処理され、慣れてくるとその映像から魚群かゴミ・ロープなどの浮遊障害物かの見分けが出来るようになり、また魚種の見当がつくようになってくる。 超音波は1秒間に数回発射され連続した画像が作成されるので、ボートを進めながら魚探を作動させることにより、通過した海底の状況・起伏・水深が一目で判断でき、経験を積むとポイント選定が的確に出来るようになる。 ポイントでコマセを振ると、画面の反応で魚が湧き上がってくるのが観察できて、面白い。 このように威力を発揮する魚探だが、水深が深くなるに連れて解析度は悪くなり、30m以上では魚群の探知は困難となる。 ポータブル機器での性能の限界でもあるが、ボート釣ではこれで充分で、魚群探知機は手漕ぎボート釣の必携品となった。 だが、海で使用する機器の寿命は短い。 愛用した魚群探知機だが、数年で壊れてしまい、今では魚探でポイントを熟知した海域に限り出漁している。 現在使用しているボートは、六艘目となるアキレスの普及型、一人でも扱いやすい半床板式の軽量の製品である。価格は40,000円台。 だが、歳とともに出漁回数が減り、最近では年間に2~3回使用するだけになってしまった。 やはり、自前ゴムボートの釣は、乗合船よりも、よほど多くの体力が必要なのである。 |
当時使用していたポータブル魚群探知機 単三乾電池8本仕様 最大測深度;120m 実用深度;30m ホンデックス製(本多電子) 価格;48,000円(当時購入価格) |
3、釣物と仕掛け 今までにボートで釣れた魚、大小にかかわらず思い出したものすべて列挙してみた。 ハゼ、シロギス、トラギス、メゴチ、マゴチ、ホウボウ、ヒメジ、カレイ、シタビラメ、ヒラメ、アナゴ、ベラ、タナゴ、アイナメ、メバル、カワハギ、ウマズラ、カサゴ、ハオコゼ、スズメダイ、ネンブツダイ、クサフグ、キタマクラ、ショウサイフグ、シマダイ、マダイ、キントキ、ハタ、マルソーダ、サバ、イナダ、アジ、ヒイラギ、イワシ、イシモチ、オキエソ、マダコ、イイダコ、シャコ、アオリイカ このように、アマダイなどの深場の魚を除き、何でも釣れてくる。 バラしてしまったので載せなかったもの~針掛かりしたアジに食いついてきたタチウオ、スズキ、シイラらしき魚 不思議とボート釣では縁がない魚~クロダイ、メジナ、イサキ 幸い未だに釣れないもの~ウツボ、ゴンズイ、ミノカサゴ、ウミヘビ 最大の獲物;イナダ45cm といった私の20年の経験です。 ところで、実際にボート釣で確実に狙え、獲物として喜ばしい対象魚は限られる。 砂泥底でのキス、カレイ 浅い根でのアイナメ・メバル・カサゴ 潮通しの良い浅場の根での、カワハギ 中深の潮通しの良い根周りでのアジ 変わった獲物としては、キスのポイントで秋にイイダコが狙える。 以上がボート釣での本命である。 また、釣り上げた小魚を活餌として置竿にし、キスのポイントでマゴチが、カワハギ・アジのポイントでは大型回遊魚を狙うことが可能であるが、あまり期待はできない。 ボートでは、常に座った状態で行動する。立ち上がることは大変危険である。 竿や仕掛けは座ったままで全ての操作が出来るように工夫しなければならない。 竿の長さは180cm以下のものを使用する。それ以上に長いと、ガイドにミチイトが絡まった際など、安全に処理できなくなる。 ところが市販されているボート用釣竿は最短で180cm、多くは210cm、240cmなので手漕ぎゴムボートでは長すぎて扱いにくい。 私が使用している竿は概ね、キス用120~140cm、根魚サビキ・ドウヅキ用160cm、大物置竿用180cmなどで、ほとんどが手作り品である。 手作りと言っても、市販のグラス延べ竿にガイドを取り付けたもの・安物磯竿の穂先部分にリール台座を取り付けたものなどである。 胴調子で柔軟性に富んだ竿が、短竿の欠点をカバーして、魚の食い込み・釣味ともに良い。 また、短めのルアー竿で軟調子のものは、ボート釣にも適当である。 リールは竿とのバランスを考慮して、糸巻き量ナイロン4号80mほどの小型スピニングリール、糸巻き量テトロン新素材系3~4号60mほどの小型両軸リール、それぞれ2ケ準備すれば充分である。 |
私が使用しているボート竿 |
仕掛けの基本 1、片テン1本針10号オモリ~キス・カレイ・アイナメ(スピニングリール) 2、ドウヅキ3本針20号オモリ~メバル・カサゴ・カワハギ(両軸リール) 3、コマセ篭とサビキ6本針20号オモリ~アジ(両軸リール) いずれも仕掛け全長は竿の全長以下とする。 ハリスはたとえ大物狙いでもナイロン2号以下とする。 ボート釣では魚とのヤリ取りが自由なので、時間をかければかなりの大物にも対処できる。 そして、玉網(鮎釣で使うような柄の短いもの)を常に用意しておくことが肝要である。 想定外の大物(タイの大型・スズキ・ワラサ級回遊魚など)が針掛かりすると、なすすべなく一発で切られる。この場合はあきらめるしかない。たとえハリスが太くとも、所詮ボート竿では釣り上げることは出来ない。 太いハリスは根掛かりの際切断できない(ボートは引っ張る際の支点になりにくい)。結局は海面上部のミチイトからナイフで切断するハメになってしまう。 このほかにも、太いハリスはいろいろとトラブルの元となるので、使用禁物である。 |
4、ボート釣の実際 | |
準備完了 ポイント目指して身も軽く ようやくヒット、手首で軽あわせ 貧しい獲物、キスとカサゴ たいした獲物がないまま、沖あがり たたんで仕舞うとこのように |
○装備;竿リール2組・小型クーラー・手提げ篭(仕掛け、小道具、飲み物、軽食)・玉網・ライフジャケット・アンカー&ロープ・フットポンプ・えさ容れ・こませ容器
、小道具必需品;ハサミ・ナイフ・ペンチ・魚バサミ ○離岸;波の間合いを計り、ボート後部を波に乗せ、足で蹴って前部から乗り込み、すぐに波打ち際から離れる。 ○漕ぎ方;ゴムボートは喫水が極端に浅い。オールは浅く、力を入れずに回転数を上げて、海面を滑らすイメージで。 長距離は片手で交互に腕の力だけで漕ぐ。上半身をバネのように使わない。前方を良く見て、風向きと風速を計算して、無駄のないコース取りを心がける。 ○アンカーリング;ポイントより大分風向きの上流まで進めてアンカーを落とす。スムースにロープを繰り出す。着低してからさらに4~8mロープを繰り出す。(水深や風速による) アンカーロープはボート前部のロープにしっかりと、かつ簡単に解けるように結ぶ。残りのロープは落とさないように糸巻きごと座席の下などに固定する。ボートが安定したら、遠近2ヶ所の目標物を十数秒注視して、流されていないことを確認する。 その後も随時確認する。 ○着岸;潮の状況で離岸時とは様子が異なることを念頭に置く。暗礁に要注意。岸に接近したら、波の間合いを計り、小さな波に乗せて前部から着岸させ、飛び降りてロープを引く。次の大きな波に乗せて、砂浜(漁港はスベリ)まで引き上げる。 出来るだけ底を引きずらない。 ○危険だらけのボート釣 貝殻や岩礁はナイフと同じ! 接触するとスパッと切れることがある。2気室あるので沈没はしないが、戻るのに苦労する。 漁船やヨットに要注意! ヨットは音もなく近づいてくる。思い通りに操船できない者もいて、接近しすぎて、あせっている未熟者とよく遭遇する。 漁船は脇見しながら操縦している者が多い。また、ゴムボートは彼らからは発見しにくいことも理解しておくこと。 これらの船がいよいよ突っ込んできたら、アンカーロープの遊び部分で回避する、大声を出す、最後は飛び込む。 私は飛び込んだ経験があります。その直後にマイボートは漁船に衝突されました。恐縮した漁師は、お詫びに獲物のタコをくれました。 風向風速は常に意識する! 陸から沖合いに吹く風が強まると、戻ることが困難になる。 私は、風向が変わり離岸地点に戻れずにやむを得ず着岸地を変えた経験が何度もあります。駐車地へ戻るのに山越えした経験もあります。風が変わったら早めに帰りましょう。 うねりを感じたらすぐに引き返す! 沖合いのうねりは、砂浜では大きな波頭が砕ける状態となり、着岸できない。こうなると近くの防波堤がある漁港に逃げるしかない。 大きな波頭に無理矢理突入すると、ボートはサーフィン状態となり操縦不能となる。そのまま岸に打ち付けられるように持っていかれ、転覆する。岩でもあると、激突する。 私はサーフィン状態から転覆した経験があります。惨めでした。見物人が大勢いたのでした。 |