HOME 昨年11月に亡くなった私の山友であり、飲み友でもありました田中一也さん(あすかパパ)。 氏は南北アルプスなど各地の高峰に足跡を残しましたが、なかでも八ヶ岳をこよなく愛し、そして行者小屋キャンプ場が特にお気に入りの場所でした。 テントの側で冷たい沢水で割ったウィスキーをチビチビと舐めながら本など読み、やがて酔眼となりご満悦なのでした。 亡くなってそろそろ一年、私はこの夏は彼に会いに此処に来ることを決めておりました。 なにせ天候不順が続き、台風10号が抜けて晴れマークが3日ほど続くこのチャンスを逃すわけにはいきません。 急きょ山小屋に予約を入れてJRキップを購入しました。 私にはテント泊は無理です、その晩は小屋に泊まって翌日赤岳を目指しました。 嶮しい、垂直系クライムが続く赤岳登山、私の脚力ではもはや無理筋でしたが、あすかパパきっと私の訪問を喜んで背中を押してくれたのでしょう、山頂を踏むことができました。 登山口の美濃戸から沢沿いの石ころだらけの道をダラダラと、高低差900mを登り続けて行者小屋です。 カンビールは二本用意して乾杯。あすかパパ用のビールも結局私が飲みました。 コース&タイム; 8/31 茅野=バス=美濃戸口11:10~12:10美濃戸12:20~南沢(休憩20分)~14:50行者小屋(泊) 9/1 小屋6:00~地蔵尾根~7:20展望荘7:30~8:20赤岳山頂2899m 山頂8:40~9:30阿弥陀分岐9:40~10:30行者小屋11:00~(途中休憩20分)~14:00美濃戸口 一日目所要時間;3時間40分、歩行時間;3時間10分 二日目所要時間;8時間、歩行時間;6時間30分 茅野駅発アルピコ交通の美濃戸口行きバスは今の時期平日は午前午後各1便があるだけ、最盛期の週末でも日に4便程度。美濃戸にはマイカー用1日1000円の広い駐車場があるのでバス利用者は少ないのだろうが、 バス利用の場合は下山場所が自由である。 マイカー派は赤岳鉱泉または行者小屋でテン泊し、赤岳を中心に周回する登山者が多いようだ。早出して日帰りする健脚者もいるようである。 バス終点の美濃戸口には食堂・入浴施設があり、此処から登山基地の美濃戸までマイカー利用者より約一時間余計に車道を歩くことになる。 登山口の美濃戸には三軒の山小屋があり、冷たい水が豊富な場所。 その先で南沢を辿る行者小屋と北沢を辿る赤岳鉱泉との分岐点があり山道となる。 行者小屋は50~60人程度宿泊可能な中規模の山小屋。ライバルの赤岳鉱泉は同一経営の兄弟山小屋、赤岳鉱泉は入浴施設が、行者小屋は赤岳へのアクセスのよさが売りである。 ところで本日の泊まり客は3名。 うち一人は素泊まりで夕食はご婦人と二人だけ、私より一回りお若い方で、座卓に向い合せで座る。テレクサくもあり、楽しくもある。 美味しい夕食。ご婦人は山の達人だった。私は左下の茶碗酒。 朝食は彼女が早立ちで私一人。筑前煮・スクランブルエッグ・サラダドレッシング・ベーコン野菜炒め・ミョウガ、ワカメ、ネギ、オクラの味噌汁、ノリ・納豆付き、豪華な特別食だった。 山小屋の混雑は避けたいところだが、いくらなんでも少々寂しい山小屋。でも山談義に三人話が弾み、楽しい夜。そしてテラスに出ると満天の星。 客室は二階の大部屋だが、パーテーションで区画され一区画三人定員、通路兼用の幅広スペースにはコタツが用意されゆったりとした作りである。我々は一区画に一人悠々と寝る。 八時半消灯。 行者小屋の標高は2350m、早朝は寒い。支度を終えて五時半朝食、六時出発。上々の天気だ。 地蔵尾根コースは赤岳鉱泉へ通ずるルートから右へ折れ、シラビソなどの灌木帯を登り、やがて森林限界を越えハシゴ・クサリ場が連続する岩稜のクライムルートとなる。手足をフル稼働させての登攀。 ようやく登りついた稜線には地蔵尾根の由来である小さな地蔵が鎮座し、下る際の目印ともなっている。 赤岳展望荘は直ぐ其処。山頂付近には赤岳頂上小屋。八ヶ岳山域は山小屋が多い。 行者小屋から稜線まで約350m、さらに山頂まで200mの高低差。 展望荘を過ぎていよいよ最後の詰め。とてつもない急傾斜。ほぼ全ルートにワイヤーが張ってある。ワイヤーに頼らずとも四つん這いの三点支持で登れば確実に高度を稼げる。 中には二本足歩行で登り切る猛者もいる。 距離が短いので恐れずゆっくり進めば何とかなる。頂上小屋を抜けると山頂は目前だ。 山頂は狭い。標高2899m。小さな社が鎮座し、順番にお参りす。 皆笑顔。単独登山者が結構多い。お互いに健闘たたえ、労苦をねぎらい、登頂を祝い、写真を撮り合う。 そこにはこの山に似つかわしくない者はいない。とても和やかな光景である。 今日は晴天無風、絶好の登山日和。360度の大展望、百名山の半数以上が視界にある。 登山者が次々と到着するので長居はできない、少し清里側に下がった場所で休憩した。 周囲の山々をズームアップで捉えた4枚を以下に掲載する ところで八ヶ岳とは、権現岳・編笠山・阿弥陀岳・赤岳・横岳・硫黄岳の六山は異論のないところ。他に【西岳・三ツ頭・峰の松目・天狗岳】の中の二山で意見が割れている。 もともとゴロがいいから八ツなので、厳密に八山を示した総称ではないのだろう。 下山路は文三郎尾根。阿弥陀岳への分岐まで鎖場の連続、その後鋼製階段を急降下、最後はシラビソ林の緩斜面となり行者小屋テン場上流に出る。 鎖場は足元が見えにくい下りの方が難しい、いきおい手の支えが頼りとなるが風雨の際は安定せずに危険である。 今日の好天下では特段恐怖感はなかったが、疲労の蓄積もあり、面倒でも一歩一歩足元を確認し三点支持で慎重に降りた。岩場では手の自由を確保するため、ストックは使用しない。 行者小屋に戻って豊富な美味しい水を500cc飲んだ。予定行程通りの時間、30分ほど休憩。 急いでも美濃戸口2時45分以外のバスはない。 そして赤岳とお別れの時。山頂はたちまち雲に覆われてしまった。 南沢沿いの下り、思いのほか疲れて長く感じた。途中休憩を数回取り通常登りの標準コースタイムである3時間を費やしてバス停到着。 途中でカモシカ親子が登山道を横切ったので接触を避け、少し手前で様子見し親子が遠ざかるのを待った。クマでなくてよかったよかった。 バス停では45分の待ち時間、ビールを飲んでいると山小屋で一緒だったご婦人が到着、やがてもう一人男性も到着した。 二人ともに阿弥陀岳まで足を伸ばしたそうで、早立ちのご婦人は兎も角として、男性は私が今朝山小屋を出た際はまだ朝食自炊の最中、その後赤岳展望荘過ぎあたりで私を抜き、 さらに阿弥陀岳に寄り道し、バス時刻に間に合うよう下山したという健脚振り。私より若干若いようですが。 三人でしばしのおしゃべりタイム。バスを降り、このまま茅野駅で別れるのが寂しい気がいたしました。 |