HOME

おじさんたちの青春登山 八ヶ岳東天狗&本沢温泉 編 2645m 2001/10/06


  

コース&タイム;
1日目;本沢口13:10~15:40本沢温泉(TEL:0266-72-3260) 泊
歩行時間~2時間、所用時間~2時間半
2日目;本沢温泉7:30~白砂新道~9:50東天狗(2640m)10:10~10:50根石岳11:00~11:40夏沢峠(昼食休憩&昼寝)
夏沢峠12:40~13:30本沢温泉14:00~15:30本沢口
歩行時間~6時間、所要時間~8時間




相模湖へ下る国道の鼠坂で2号車の位置を確認すべく携帯で連絡したところ、偶然にも車2~3台間に入れて後続しているようだ。ゆるいカーブでは後続車から我々の1号車が確認できるとのことである。
今回は、湘南のAKIOさん、sigeさん、作者である私の3人が1台で、橋本駅待ち合わせのケンゾウさんとシュンイチさんが別の1台に分乗しての行動である。中央自動車道談合坂S.Aが待ち合わせ場所だったのだが、早くも2台が相前後して行く。
本日の行程は本沢温泉まで、歩行時間は2時間程度なので余裕がある。須玉で中央自動車道を降り、清里付近で早めの昼食休憩し、松原湖で国道と別れ稲子湯方面へ左折する。登山口の本沢口駐車地へは13時頃の到着だった。付近には2~30台程度の駐車スペースがある。
本沢温泉までは緩い登りでジープなら通行可能な山道、遊歩道を散歩する感覚で、宴会前に一汗かくのに格好である。小型バスでやってきた登山ツアーご一行二十数人と我々は相前後してのんびりと本沢温泉へ向かう。
後に聞いたところ八ヶ岳主稜線を縦走するクラブツーリズム山旅上級コースの御一行で、翌日は赤岳頂上小屋泊とのことである。上級者もここではわれらと何ら変わらず、のんびりムードのカメ足歩行だ。
渓流脇のテント場を過ぎ僅かに上って木造二階建ての本沢温泉に着いた。温泉宿というよりは大きな山小屋の風情である。歩行およそ2時間余り、たっぷりと森林浴を味わい体の隅々まで酸素が行き渡り、細胞の一つ一つが活性化したようだ。 今回の行程は此処での打ち止めを提案する。安易に流されやすい我らの悪い癖である。ちなみに、今回幹事は私である。

宿では別館の2階へ案内された。6畳ほどの狭い部屋で、5人分の布団を敷くスペースがない。仕方ないのでケンゾウさんが押入れ上段に寝ることにした。私は寝ぞうが悪いので落ちる恐れがある、AKIOさんとsigeさんは鼾をかくので押し入れは響く。シュンイチさんは新人なので下へ寝かすことにしたのだ。
当日は超満員だった。夕食は大部屋で、隣人と肩をくっつけながら取る。献立メインの鍋料理は10人に1鍋程度しか用意されていないので、運の良い人以外はほとんど口に入ることはなかった。
本来当日は、年に一度のコケモモ酒祭りで、宿泊客全員にコケモモ酒が無料で振る舞われる特別日だったのだ。ところが貴重なコケモモ酒のこと、超満員にあわてた宿側が、予告なく急遽1週間延期してしまったのだった。
味わった経験のない我らは、珍しいので購入して一杯づつ味見することにした。
ところで、私の隣席でビールをグビグビ飲んでいる客は、来る道で一緒だった山旅ツァーの添乗員である。彼女にコケモモ酒を勧めたところ、たちまちグラス一杯を飲み干してしまった。
この女史、その後自分の客をそっちにのけて、盛んに我らと酒を酌み交わす。明日の縦走上級ツァーを放り投げて、こちらの東天狗コースを我らと一緒に行きたがり、私としては嬉しいながらも閉口した。

夕食に先立ち、例の【我が国最高所2150mの常設露天風呂】と謳われる本沢温泉自慢の風呂へ皆で様子見に出かけた。宿から10分ほど山道を上がった硫黄岳爆裂火口直下を流れる沢の脇にある。サンダル履きでは厳しい道だ。秘湯に相応しい場所である。 我々が着いた時は女性グループが入浴中で、仲間の2~3人が傘を開いて目隠し代わりにガードしていた。この風呂は視界を遮るものが全くないのだ。
それどころか脱衣場も、脱いだ服を入れるカゴすらない。
我々は当然のように遠慮し、離れて先客が出るのを待つことにした。ところが、後から来た一人の男が強引に囲みを破って露天風呂へ降りてしまった。
突然の乱入者に邪魔された女性陣は、たちまち風呂から出て着替えも中途に険しい顔つきで上がって来、待機中の我らに軽蔑の一瞥を投げかけて下って行った。
「ち、違います!誤解ですよう!」
「あの変態オヤジは我らとは関係ないですう!」
「私たちは皆様が出るのを待っていただけですよう!」
その後我々も入浴してみたのだが、狭い浴槽でお湯はぬるく、湧出量が少ないためかほとんど入れ替わらず、足はジャリジャリ・砂利の地面に仕方なく直置きした服もジャリジャリ、この原始性が受けているのかもしれませんが、あえて入ることはありませんね。 それでも是非にと希望される、特に女性は、よほど人のいない時期時間帯をねらって下さいな。

夕食後、内風呂に入る。内風呂の湯もぬるく、浴槽の湯は既に3割方減ってしまっていた。こちらも湧出量が少ないのだろうか?
部屋に戻り飲み直す。初参加のシュンイチさんのザックからは酒のツマミが山のように放出された。夫の冷遇を心配した彼の奥方様が、山温会の諸先輩へ挨拶代わりに差し入れたものだった。これにより無事にシュンイチさんの山温会入会が認められたのだった。
たちまち20:00の消灯時間、これからが佳境の我らは外で飲み直す。満点の星空の下、懐中電灯で照らす紅葉が見事に浮き上がり、とてもいい雰囲気です。少々寒いので、お酒がずいぶん進んでしまいました。




翌朝6:30朝食、7:30出発。周回コースなので、宿泊宴会用などの不用な荷物を宿の廊下に預け、サブザックなど軽装の支度をする。秋晴れとはいかないものの、雨の心配はなさそうな天気である。
隣ではツァー上級コースご一行が朝のミーティングを行っていた。今朝から添乗員の他に山岳ガイドが付いている。
一行のうち一組が説得されて下山するようだ。上級コ-スは厳しいのだった。酒好きな添乗員も今朝は真剣な顔つきに変わっていた。
我々のコースは八ヶ岳としては入門的であるが、我らにとっては上級コースに匹敵する。おのずと気が引き締まる。
ところが、
「あれっ、一人足りないよ」今回リーダーの私が気がついた。
「AKIOちゃんだ、トイレが長いのだろ」sigeさんは素っ気ない。
「まてよ、さっきまでそこにいたはずだけどね、そういえばオバサンたちのグループが庭に出て来てから姿が見えないね」と、ケンゾウさんが訝った。
その女性パーティは建物の隅で身支度しながら談笑している様子だ。疑いを持った私は見に行った。AKIOさんはそのパーティの一員のような顔をして見事に溶け込んでいたのだった。

白砂新道は本沢温泉の裏からスタートする。稜線へ直登するので急勾配だが最短ルート、およそ80分で東天狗の付け根へ飛び出る。そこまでの登山道はダケカンバなどの樹林で展望は遮られており、稜線へ飛び出た瞬間一気にに森林限界を抜け出し視界が開け、きつい登りの苦しさを忘れてしまう。
その上に当日はガスモヤの登山道から稜線へ飛び出た瞬間に雲を突き抜けて雲海の上に出たので、感激はひとしおだった。上空は抜けるような青空である。白砂新道の由来の通り、この辺りの地表は残雪と見間違うような白砂で覆われ、緑のハイマツとのコントラストが美しい。
ここで夏沢峠方面からの縦走路と合流したので急に賑やかになり、東天狗へ向かう道には点々と登山者が見えた。
山頂はさほど広くはないので混雑していたが、順番待ちというほどではない。雲海の彼方に槍穂高が望まれ、赤岳は間近に聳えていた。西天狗は手が届く場所にある。だが西天狗まで足を伸ばそうと云いだした者はいなかった。たとえ言い出した者がいたとしても、リーダーである私が却下するつもりだった。
残念なことに山麓の景色は雲の下、一切展望は得ることができなかった。

東天狗山頂から一旦白砂新道分岐まで戻り、縦走路を夏沢峠へ向かう。峠までに根石岳・箕冠山などいくつかのピークを乗り越さなければならず、地図上から想定していた平坦な地形と実際は隔たりがあって、なかなか疲れる。
箕冠山でオーレン小屋方面への縦走路と分かれ、夏沢峠へは左折する。この先は緩い下りで、シラビソ・コメツガ・カラマツなどの低木樹林帯を行く。
夏沢峠には山小屋が2軒あり、トイレも有料だが利用できた。
峠で昼食大休止。峠からの硫黄岳が大きい。昼食は宿に頼んだ弁当、幕の内風で山の弁当としてはなかなか豪華だった。
峠から今朝の出発地、本沢温泉までは硫黄岳爆裂火口直下の沢沿いに降りる楽な道、途中例の露天風呂脇を通る。冗談にも入いっていこうと云い出す者はおりません。
本沢温泉でビールを飲んで休憩し、預けた荷を受け取り荷造りし直し、最後の頑張りで本沢口へと下る。
新人のシュンイチさんがヒザを痛めて顔をしかめながら足を引き攣り相当に辛そうである。
たくさんの酒のツマミを頂戴した手前もあって、心配した我々は相談のうえ、私が彼の荷を背負い、健脚のsigeさん・ケンゾウさん2人が足早に先行して下山することにした。4WDレガシーの力を如何なく発揮し、途中の方向転換可能な場所まで山道を迎えに来てもらう算段である。 シュンイチさんに休憩してもらう余裕まで生まれ、この作戦は成功したのだった。
こうして、全員無事に2640mの山頂を踏み、新たな仲間を得て、東天狗は我が山温会の新たなページを開く記念的山の例会となったのだった。
紅葉は標高2100mの本沢温泉付近がちょうど見頃で、2500mの稜線付近では既に落葉が始まり、1600mの本沢口ではようやく色づき始めた頃合だった。 2008/06 記

no.3 上州高田山へ , no.2 八ヶ岳東天狗 , no1 常念岳へ